日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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日本語教師として


 K (日本)

◇前回(インドネシアで暮らして)>>

 


−ところで先生、日本語教師としていろいろな外国人と接していらっしゃったと思いますが日本語学校で教えるのは大変でしょう。勉強しに来た学生ばかりではないですから。
K:そうですね。多くの学校の先生方は大変だと思いますが、今行っている学校は遅刻も居眠りする学生もいませんから、とても楽です。

−本当ですか。一部の進学率がよい有名な学校ならそういうこともあると思いますが、どこの学校も悩んでいますから。
K:普通の学校ですよ。

−それは驚きですね。
K:オリエンテーションには新入生だけでなく在学生も全員出席しなければならないんです。そこで「目標は何だ」と大きな声で怒鳴るんですよ。

−でも新入生は何を言っているかわからないでしょう。
K:それが初級の何もわからない学生に伝わっているんです。例えば「学校は何時に始まるのか」と言うと新入生だけでないから「9時です」と返ってきますよね。すると「9時に始まるのに9時に来る…いいのか。10分前には来い」と怒鳴るんですよ。いろいろ注意した後で「今日のことについて感想文を書け」って言うんです。

−でもまだ来たばかりの学生が感想文なんて書けないでしょう。
K:「みんなの日本語」の7課ぐらいの学生ですから、「9時です。学校に来ます」とか何とか書くんですよ。

−そうですか。怖い先生が必要だということなんですか。
K:それに外国人スタッフがまた怖いんです。何か問題のある行動をしたらもう大変ですよ。カンニングなんかする学生はいませんが、先生に立てついたりしたら職員が来てぴしゃりですよ。

−進学率はどうですか。
K:いいですよ。結局、最初が肝心なんだと思います。

−優しくしてばかりじゃ駄目ってことでしょうか。携帯電話はどうしていますか。
K:ポケットにいれるんです。透き通っていて薬などを入れるような壁かけポケットが教室にあります。他の学校では辞書に使うからよいと言っていますが、わからないことは先生に聞けっていているんですね。翻訳を渡していますから大丈夫なんです。学校も努力しているんです。また驚いたことにベトナムの子が漢字がすごくよくできるんです。

−それはすごいですね。私の学校ではわざわざ時間を取って漢字を勉強させているのに。
K:最初の時点で漢字で書かせるんです。最初は大変でもできるようになるんです。そんなに漢字にたくさん時間を使っていませんが。

−外国でも教えられたことがありますか。
K:正式に教えたことはありませんが、実習したり見学させてもらったりしました。

−ではそのお話をお願いします。
K:私は大学の児童学科を出ているので、バリ島の幼稚園のボランティアに行ったことがあります。午前中手遊びしたりして午後は高校を見学する予定だったんですが、それが全然できなくてコーディネーターが自分の家で教えてくれと言ってきたんです。そんなつもりで来たんじゃないと思ってその後は自分で探しました。ホテルのオーナーに、息子が行っている学校に行ってくれと頼まれてそこに行ったんですが、実際に行ったら、私が行くと知って先生が雲隠れしちゃったんです。

−自信がなくてですか。
K:「もしよかったら教えてください」と言い残していなくなっちゃたんです。でも勝手に教えるわけにいかないし、そのまま帰ってきてしまいました。

−先生は日本人でしょう?
K:いいえ、現地の人です。インドネシア人は知らない人と話すのは恥ずかしいと言う人柄ではあるんですが、自信がなかったんだと思います。息子さんが校長に掛け合っているので私が日本人で資格を持っている日本語の先生だということがわかっていたと思うんです。
「明日また行けばいいよ」と言われて次の日も行ったんですが、また来なかったんです。仕方がないので次にウブドの高校に行ってみました。日本語の先生はとても若くて四国にちょっと来たことがある先生でした。その人はラッキーだととても喜んでくださいました。授業に出てと言われて授業をしました。バリは日本語を教える先生が少ないらしくて他の学校にも来てくださいと言われて彼女のバイクの後ろに乗ってほかの学校にも行きました。結局彼女の学校に3日間毎日行っていました。その先生の授業を見学して私も教えました。最初の学校の先生は日本に全く行ったこともないし、自己流で教えていたみたいです。一緒に授業をした先生もやっぱり変でした。

−教科書は「みんなの日本語」でしたか。
K:違うと思いますが、よくわかりません。あちらはコピー文化が進んでいてコピー屋さんが製本もやっていてすごく安くできるんです。1500円ぐらいの本も2・300円ぐらいでできちゃいますから。白黒ですが。そういう本だったのでよくわからないんですが・・

−そうですか。
K:イントネーションもあまりよいとは言えませんし、授業の後教えてと言われて会話しながら日本語を直してあげました。

−1クラス何人ぐらいいたんですか。
K:40人50人はいましたね。観光が盛んですから、自己紹介などはできるんですが、ちょっと深い話になるとできませんね。まだまだ足りないところだらけでした。

−インドネシアは日本語に人気があって先生が足りないのでしょう。
K:前はとても人気がありましたが、今は韓国語のほうが人気があると思います。

−韓国が進出しているってことですね。
K:そうです。インドネシアでは日本人の先生が必要だと強く思いました。今は交流基金が日本語の先生のアシスタントを派遣しています。

−それは何ですか。
K:1年間でお金もちゃんと出る「日本語パートナーズ」です。日本語教師よりは軽いです。先生の資格を持っていなくてもいいんです。

−年齢制限があるでしょう。
K:70まで大丈夫だと思いますよ。むこうで文化を教えたりするんです。インドネシアに行ってみて本当にそういう人の必要性を感じました。

−そうですか。私が知っている外国人の日本語の先生たちは国際交流基金で再教育されていましたが、全員驚くほど優秀でした。
K:それは自信がある人しか出てこないからですよ。その人たちは特別ですよ。一握りの人たちですよ。

−送り出す国もあまり変な人はよこさないのかもしれませんね。
K:そうですよ。よこさないし、まず恥ずかしくて出てこないと思います。「嬉しい。色々話してください」という人たちはそこそこのN3ぐらいのレベルがある人達だと思います。

−そうですね。いい経験でしたね。他の国にもいらっしゃったことがありますか。
K:この間はミャンマーに行きました。

−どうやって見つけたんですか。
K:ええ、学校の主任に紹介していただきました。

−ミャンマーの学校はどうでしたか。
K:やっぱり問題がありました。

−そこで教えたんですか。
K:見学だけでしたが、学生との交流は少しありました。やっぱり本当の先生が来るとなるとみんなシャンとなりますね。ミャンマーの日本語の先生は日本に住んだことがある韓国人でした。上手でしたが発音が変でした。日本語の先生が足りないんです。賃金も安いですし、なかなか日本人の先生を確保するのは難しいと思いました。

−ボランティアで行ってくれる人はいますけどね。
K:台湾の高雄に行った時はまず大学で実習して、その後各都市の日本語学校を回りましたが、日本人が経営していて全員日本人の先生が教えていた学校は素晴らしかったです。でもどこの日本語学校でも男の先生が「こんにちは・・・」といういい方が子どもに言うように妙に声を張り上げていてちょっと不自然でした。一緒に行った友人も不思議だねと言っていました。

−教えるとなると力が入りすぎてしまうのかもしれませんね。
K:そうですね。

−先生はいろいろいい経験をなさいましたね。今後もよいお仕事を続けてください。ありがとうございました。

(2017年12月16日掲載)