
ヴォロビヨワ・ガリーナさん
日本では、電車やバスの中で席を譲ることはあまり見られません。私がはじめて日本に行ったとき、自分の国の習慣から見て、男性が女性に席を譲らないことに驚きました。ある日、電車に乗って空席がなくて、私はずっと一人の男性の前に立っていました。彼は足を広げて、2つの席を占めていました、そしてあと一つの席にかばんを置いていました。もっと驚いたのは電車の中で左手で赤ちゃん抱いて、右手で立っていた小さい子供の手を握っていた若い母親の前に7人の若い男女が座っていたことでした。みんな彼女と子供達を気にしていませんでした。そして何回も素早い子供か若者が年寄が座ろうとした席を先に占めたことも見ました。
私は、全世界で文化、伝統を守っている国、人々の親切で名高い国である日本ではどうして電車やバスの中でこのようなお互いの無関心があるのかと考えていました。知り合いの日本人に聞いたこともあります。しかし、だれも説明できませんでした。「以前譲っていましたが、そのあと少しずつ習慣が変わりました。」という答えだけを聞かせてもらいました。そしてお年寄りは弱く思われることが嫌いなようですので、だれかが席を譲ろうとするとき座らないことにすることもあると言われました。私の国の女の子は日本に到着してまもなく、電車の中であるおばあさんに席を譲ろうとしました。それに対しておばあさんは素っ気なく断りました。「私はまだ立つことができる」と答え、腰を下ろしませんでした。女の子はショックをうけて、別の車両に逃げてしまいました。私は日本の電車やバスの中で何回もお年寄りや子供連れの母親に席を譲りました。その際にたいていの場合最初に断って、その後「本当に座ってもいいですか」と聞いて、感謝して座りました。
ある日私は立って、込んでいた電車に乗っていました。私の隣に70代のおばあさんが立っていました。私たちの前に2人の若い女性が座っていました。これらの女の子たちが同時に電車を降りて、私とおばあさんが隣に座りました。日本人は通常、電車の中で見知らぬ人に声をかけることはありませんが、おばあさんはずっと立ってとても疲れていたようで「座ってよかった」と私に言ってくれました。私は若い女性たちが早く彼女に席を譲ったほうがよかったのにと答えました。おばあさんの答えは私を驚かせました。
私はもう仕事をしていないから、もう役に立たないです。それに対して、若い人々は仕事をしているので、疲れて休息する必要がある。もし誰か私に席を譲ってくれたら、ありがたいです、でも譲ってくれなくても怒りません。
でも、彼女たちには母親がいるでしょう。もし彼女たちがあなたに席を譲ってくれたら、彼女たちの母親にも誰かが席を譲ってくれると考えるべきだと思います。
私はこう言いました。しかし、おばあさんは同意してくれませんでした。
ある日私は、日本人の先生方に伴い10か国からの日本語教師のグループの一員として、日本の学校を訪問しました。数人の先生は、彼らの国の民族衣装を着ました。電車、その後バスに乗って、その後水田のそばを歩いてやっと学校に着きました。学校で私たちは授業を見て、その後日本の武道、踊り、生け花、茶道などのレッスンも見せてもらいました。その後私たちは高校生と交流して、自分の国の話をしたり、質問に答えたり、意見交換をしたりしました。訪問が終わったとき、私たちはバス停に向かって行きました。バス停に到着したとき、そこに既に私たちと交流した高校生たちがいました。バスが来ると、高校生たちは先にバスに座って、空席を占めて、残りの席に自分のかばんを置きました。私たち、外国人教師は立って乗るしかありませんでした。私たちは、学校のお客様だった教師たちへの態度に非常に驚きました。どうしてその学校で茶道などの楽しいことを教えているにも関わらず、年寄に対する尊重、他人に対する心配りの必要性を教えていないのでしょうか。
日本の電車やバスに優先席がありますが、その席を占めた人も譲らないことが普通です。ある日、インド人の女性の友達と一緒に終点でバスに乗りました。席はみんな空いていましたが、私たちは一番後ろの席に腰を掛けました。後に乗った人々は優先席も含めてすべての席を占めました。あるバス停で4人の小さい子供を連れた2人の若い女性がバスに乗りました。しかし、だれも席を譲りませんでした。シルバーシートに座っていた乗客も気にしませんでした。私たちはとても驚きました。私は後ろから出て、「どうぞ座ってください」と言いました。2人の女性は最初に「いいえ、結構です」と言いましたが、結局座ってくれました。私たちはほっとしました。やっぱり動いているバスの中で立っている小さい子供は倒れてけがをしやすいと思いましたから。
私はこの状況を変更することはそんなに困難ではないだろうと思います。子供と若者にそれについて説明する必要があります。私はある日東京国際大学の学生のために講演をして、そのあと交流しました。一人の学生は、私が日本にいてカルチャーショックを経験していないかと質問しました。「私の国では、お年寄り、身体障害者、子供連れの両親と女性に席を譲る習慣がある」と言いました。「そして同じ年齢の少女にもあなたのような少年が席を譲る」と付け加えました。そして、「私は、「姥捨て」という習慣についての日本の映画を思い出しました。昔々、ある日本の村では弱くなって家族に役に立たなくなった老人たちを特定の山に連れて、捨ててしまい、おじいさんとおばあさんたちは飢餓と寒さのため一人で死んでしまったそうです。電車とバスの中のお年寄りへの無関心は「姥捨て」に似ていると思います。」と言いました。私の話を聞いて、質問した学生は立ち上がって、「私はこれから年寄にも、少女にも席を譲る」と言ってくれました。
(2015年7月23日掲載)
>> 第142回 日本人の親切さ (ヴォロビヨワ・ガリーナ)