(>>前回から)
−ところで中国で暮らして中国人と日本人はどんなところが違うと思いましたか。
美麗:そうですね。中国人は日本人よりストレートに表現しますね。白黒はっきりさせたがりますね。
−トラブルはありましたか。
美麗:日本人イコール悪というイメージがありましたね。歴史上のことを、これって本当のことなのとか聞いてくるんです。南京事件とかいろいろありましたから。
−どう対応したんですか。
美麗:あまり刺激しないようにと考えて答えていました。中国人は情に厚いですから、それを乗り越えれば大丈夫ですよ。
−じゃ、あまり困ったことはなかったんですか。
美麗:そうですね。一番困ったことは割り勘の文化がないことでしたね。日本なら友だち同士の場合割り勘が当たり前ですが、中国では誘った人が払うんです。ですからうっかり誘えないんです。一緒に食事したり飲んだりしたらもっと友だちになれたのにととても残念でした。
−そうですね。払う人は決まっているんですか。
美麗:誘った人が払うんですね。年上だったらその人が払いますね。あとグループの中で立場が強い人が払いますね。あるとき日本レストランに誘ったんですが、こちらは留学生の身でお金がたくさんあるわけではないので困りました。次の時にもっと高いレストランでおごってもらったんですが、今度は悪いなという気持ちになってしまいました。タクシー代も何から何までおごるんですから、窮屈に感じました。
−そうですね。
美麗:レストランのレジはどこでも「私が払う」「いいえ、私が」などという光景が見られますよ。特に日本人の場合、金持ちだと思われているので、中国人におごってもらった後、もし同じぐらいのレストランに行ったら中国人は「もっといいものご馳走してくれよ」とか「日本人ってせこいな」「けちだな」と思ってしまいます。だから日本人としては少し上のレベルの物をおごってあげなきゃと思うんですが。
−相手も同じように思っているかもしれませんよ。
美麗:そうですね。私が中国人だったら日本人イコールお金を持っているというイメージがありますからね。当時は今と違って日本へ行けば金を稼げると思っていましたから。よけいけちと言われてしまいます。
−何年ぐらいの話ですか。
美麗:2000年ぐらいですね。ですから当時日本人はけちだということが浸透していたんじゃないでしょうか。
−そうかもしれません。
美麗:今でもネットで調べると、日本人はけちという印象を与えていますね。
−けちのほかに日本人に対してどんな印象がありますか。
美麗:いい方からいうと忍耐強い、公共の場では礼節を重んじる、ですかね。日本人は携帯電話のマナーもうるさいですから。
−でも中国では授業中に日本の学校のように私語はしないと聞いていますよ。
美麗:それはそうです。先生に対する尊敬の念が強いです。それに授業を本当に熱心に聞いています。
−一人っ子が多いと思いますが、わがままじゃないですか。
美麗:人によりますね。割と太った子が多かったですね。20歳ぐらいで通風にかかっている人もいました。食べ物より運動しないのが原因かなと思いました。運動のクラブに入っている人は勿論太っていないし、彼らは本当に運動神経が抜群でした。日本人に比べて背が高くて機敏です。
−中国は広いですから、北の天津あたりは背の高い人が多いかもしれませんね。中国人の家に行ったことがありますか。
美麗:補習をしてくださった先生の家で本場の家庭料理をご馳走になりましたが、すごくおいしかったです。その訪問で驚いたことはすごくセキュリティーに気を遣っていたことです。治安が悪いので先生の家はドアに上下で1つずつの鍵がつけてありました。中には勿論チェーンロックがありました。そのドアの先に網戸がありました。そこまではまあ普通だと思いましたが、その先に鉄格子のドアがありました。これにはびっくりしました。
−鉄格子には驚きますね。そのほかに何かありますか。
美麗:出逢いを大切にする中国人、コネ社会でもありますが、ご近所づきあいまで密で、日本とはずいぶん違いました。私は中国留学によって人生が変わったと言えます。
−そうですか。貴重な話をありがとうございました。
(2012年9月28日掲載)