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Hideko Davisさん

Hideko Davis さん(写真右)と夫のDickさん

福祉の仕事に携わって 2


by Davis Hideko (米国)

 家庭内暴力(DV)はどの国にも、またどの社会にもある社会の病気の一つです。DVと一概に言っても体に暴力を加えられるだけでなく、他にもDVに当てはまる条件があります。その中で多いのは、精神的または経済的な虐待です。問題はこのような虐待を受けているにもかかわらず自分がDVの被害者だとは知らずに、一生懸命我慢して精神的にも身体的にもぎりぎりのところまで追い詰められていく人たちが多いのです。

 一昨年から今年にはいり、こうした在米日本人からかかってくる電話の数が増えてきています。不景気のせいもあるでしょうが、地元、Sacramento にあるアジア人向けの保護団体 My Sister's House の存在が知られてきたことも理由だと思います。被害者の皆さんの話を聞くにつれ、もっと沢山の人々にDVについての知識を持って頂いて、将来少しでも被害者を少なくできればと思い、こうして筆をとりました。

 結婚または同棲生活は東西を問わず、好きな人と一緒ならばどこにいても、少々の苦難にあっても幸せと感じられるものです。しかし異国で暮らすということは、いくら言葉が達者でも、生活習慣、文化の違いなどで、意見の違いや Communication のすれ違いなどでいい争いになり夫婦喧嘩になったりすることもあります。まして、不景気で経済的なストレスがあれば喧嘩にもっと拍車をかけることになります。

 悪いことに、家庭内暴力、Domestic Violence(DV)は夫婦喧嘩とは、違った怖さがあります。大概の場合、夫が異常な形で権力を振るい、妻や子供を支配するのが目的というところから始まります。

 日本では女子は従順で自分の権利をあまり主張しないように教育されています。それがかえって裏目に出て、女性が日本から持ってきたお金を男性が使っても、彼女たちは何も言いません。毎日罵られても、自分が悪かったのだ、我慢さえすれば良いのだと思います。K子さんは食費に使うお金にも文句を言う夫が、自分たちの子供のための衣服費も出さないので、日本に里帰りした時にやっと子供に服を買ってやったそうです。その上些細なことで罵られたり痣が見えないような所をつねって意地悪な体罰を受ける子供をかばって毎日のように罵られて、ずっと我慢して暮らしてきたのです。

 体に危害を加えられないけれど、前述のように精神的、経済的な DV は狡猾にして陰険であり、被害者は自分が被害者だとは認識しないケースが多いのです。Y子さんは、いつも機嫌の悪い夫の機嫌取りに自分の車を買うために持ってきたお金をさんざん貢いだ挙げ句、車を買うどころか、運転免許も取らせてもらえず、交通の不便な所に住んでいるので、食料品の買い物に外に出るのが精一杯、それでもレジで並んでいる時にまるで彼女が浪費しているように、皆の前で文句ばかり。今までじっと耐えてきた彼女は罠にはまった感じで気分が落ち込み身体にも症状が出てきています。

 相談を受けた際に日本語で私たちは被害者が取れる選択をお知らせし、その選択された道をたどるための必要な費用や Agency の存在、並びに身を守るためのセイフティープランを作るお手伝いをします。また、子供を危険にさらしたという理由で、子供を児童保護局に取られてしまう可能性もあるということもお知らせし、どうやって子供の安全を確立するかのご相談もいたします。

 DV の被害者で長年耐えている人たちに共通していることは、自分が劣っているのだ、だから夫から罰を受けて当然だ、我慢するべきだと言う考え方です。ましてや、日本人にとっては言葉の不自由な国に住み、自分の意見も自由に述べられないのです。ですが、虐待されて我慢する義務は誰にもありません。もし、被害にあっていると思っているならば、地元の警察、教会または DV Hotline にすぐご連絡ください。どうか、家庭内暴力は、親を通して子供に一番大きな影響を与えていることを認識してください。
(2011年4月)