日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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薛芳艶さん

写真は、薛芳艶さん

距 離


by 薛芳艶(中国)

  時々自分が周りの環境と距離があると感じます。日本で生活していると言っても日本人の友達が少ないからです。私は同級生の日本人学生より年上のこともあり、感じたことや考えたことが異なっていて、深い話にはなりません。友達と言えば、ただ飲んだり食べたりするだけの仲間では長く付き合っていけないと思います。心と心の距離を縮めるのはやはりよくコミュニケーションを取れることだと思います。

 去年、バイト先での顧客とトラブルのことはまだ記憶に残っています。その日は本当に最悪な日でした。もう日本に来て五年が経って、言葉は通じますが、文化習慣はまだ通じないところがあります。同じ言葉を言っても、感じが違ってしまうところもあります。そ時にそのお客の一言で私は腹が立ちました。「貴方は外国人でしょう、話にならないわ、日本人を呼んできて」と言われたのです。外国人ならこのような境遇に陥ったことは少なくないでしょう。差別と言うよりも、人と人の間に信頼感が築けていないのです。人が心を広げれば異なる文化を受け入れるのは簡単なことだと思います。コミュニケーションはただ同じ地域にいる人々が交流することだけではありません。国境を越えて、世界各地の人々と交流することも大切です。文化の違いよりも心の中に持つ排斥感が人々の間に距離を生みます。

 日本に来たばかりのことを思い出しました。その時は茨城県にいました。はじめ私は日本語があまりできませんでしたが、メモ用紙を常に手元に持って、通じない時があったら漢字を書いたり絵を描いたり、人々と交流するためにいろいろなことをしていました。

  ちょうど日本に来たときは八月頃でした。祭りが多い時期だったから、様々な日本の伝統的な行事を見ることができました。友達に誘われて、相撲祭りを見に行って、アマチュア女子相撲に参加しました。その時に応援してくれる人の中に日本人もいました。みんなと一緒に楽しい時間を過ごしました。言葉は通じませんでしたが、それを越えて、日本人との間との自然な交流ができました。

 人と人との距離というのは、空間的なものだけではなく、地域文化の距離や、言葉の距離や、心の距離などなどがあって、人々の間の距離を遠くするものだと思います。
(2010年1月)