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初めて親しくなった日本人


by 王紀貞(台湾)

王紀貞さん

 私は日本に来て13年になります。もうすっかり日本の生活に慣れました。この間、いろいろな日本人に出会いましたが、中でもまだ日本語がおぼつかなかった頃に親切にしてくれた人々のことは印象深く残っています。

 中でも日本語学校の寮の管理人の横山さん御夫妻には大変お世話になりました。自習室や食堂にいると決まって「どう?」とか「勉強頑張っているね」声をかけてくれました。私はそれがうれしくてよくおしゃべりをしました。

 寮の個々の部屋には冷房がなかったので私たち学生には日本の夏は過酷なものでした。横山さんは冷房のある管理人室に呼んでくれました。テレビを見たりお菓子をごちそうになりながら、いろいろな話をしました。初めはほとんど日本語ができなかったのでよく漢字を書きました。そんなとき日本人が漢字がわかることがコミュニケイションを取る上でとても役に立ちました。

 奥さんも親切な人でよくいろいろな物を食べさせてくれました。初めは日本語がわからなかった私たちにほっぺたを右手でこすりながら「おいしい」を教えてくれました。その動作は日本語がぺらぺらになっても変わらなかったので奥さんというと「おいしい」と言いながらほっぺたをこする姿が今でも懐かしく思い出されます。

 横山さんは私ばかりでなく、寮生たちみんなにいろいろ親切にしてくれました。私は他の2人の寮生と築地まで連れて行ってもらったことがあります。雨の中わざわざお寿司を食べに行ったのです。本当にびっくりしたしうれしかったです。また仕事がなかった私に肉屋の手伝いのアルバイトを見つけてきてくれました。

 国を離れて日本語もよくできなくて心細い思いをしていた私たちに横山さんの存在は本当に大きいものでした。日本語学校時代、美術大学時代、就職してからもいろいろな日本人と知り合いになりました。しかし初めて親しく知り合った日本人が親切な横山さんだったことはとても幸運なことでその後の私の日本での生活に影響を与えていると思います。
(August 2008)