日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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電車で見た「日本独特の文化」


by 徐太花(中国)

徐太花さん

 私は中国吉林省梅河口市朝鮮族中学校で日本語を教えている教師である。梅河口という町は小さいが、おいしいお米がたくさんできる。今年の2月から3月にかけて、日本に来て、国際交流基金の日本語国際センターで研修するチャンスが出来た。とても幸いで、ありがたいことだと思っている。

 センターでの二ヵ月間、毎日優しくて親切な先生方たちからいろいろ知識を学んだり、いろんな国の日本語教師と交流をしたり、国では全然接することができない日本文化を体験したりした。とても面白くて楽しい毎日だった。それは日本語教師として私にとってはとても役に立つ二ヵ月、個人的な私にとっては有意義で、忘れられない懐かしい思い出になる二ヵ月になった。

 その思い出の中から一つ、気になったことを紹介する。

 初めて日本に来た私にとっては日本の何についてもが新鮮であり、もの珍しかった。ほんとうにきれいだし、ハイ・テクノロジーの国だった。

撮影=筆者

 ある日、東京から日本語国際センターに帰る電車に乗った。初めて、日本の電車に乗った。プラットホームから中国と雰囲気がぜんぜん違った。例えばほとんどの人が新聞を読んだり携帯を見たりしていた。しばらくして電車に乗った。通勤する人でいっぱいだった。座る所がなかった。でも、静かだった。そして、これが国とまったく違う所だと気が付いた。私はこんな雰囲気の中にいるのがうれしかった。優越感だといえるかな。

 私はちょっと恥ずかしいけど周りを見回した。すると、70歳過ぎたようなおじいさんが見えた。彼はちょっと疲れたような顔をして手すりを握っていた。次の駅に着いた。彼はもしかして空いている席がないかなという様子で周りを見回した。こういう風に何回も繰り返した。ところで、彼の横では若者が座って携帯で遊んでいた。横の老人に全然気がつかないようだった。それで、私は不思議な感じがした。でも、すぐ分かった。これもやっぱり国とまったく違う日本独特の文化だと。

 しかし、最初の優越感がなんとなく消えてしまった。ハイ・テクノロジーの国、個人が尊重される国、ひとりでも不自由なく静かに生きていける国。でも、中国のにぎやかな雰囲気がとても懐かしくなった。

 日本はとても住みやすい国だとおもっている。でも、人と人の無関心さが少しでもなくなれば、もっと温かい国にならないかなと感じた。
(April 2008)