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フレンドリーな感情表現


by 岡村由香里(日本)

「ジョーズ」メンバー
【写真はJ.O.H.S.の結成メンバー。前列(女性)左から岡村由香里、鈴木理愛。後列(男性)左から秋岡一夫、仲村淳】
 私は現在ユーフォニアムという楽器の演奏家としてウインドオーケストラとの共演や吹奏楽団の指導などをしている。また尚美学園短期大学および東京コンセルヴァトアール尚美の卒業生で作ったジョーズというアンサンブルのメンバーだ。ジョーズ(J.O.H.S.Euphonium Tuba Quartet)は私たちメンバー4人の頭文字をつなげて団体名にした。「上手」に引っかけて名付けた。ジョーズはテューバ2人、ユーフォニアム2人で構成されている(注)。

 このジョーズがテープ審査に通って1999年オーストラリアで開催された「テューバマニア国際大会」に参加することになった。

 コンクール会場に行ってみるとあちこちに見慣れた顔があって驚いた。日本人が大勢参加していたのだ。早速練習をしようと思ったが、慣れない海外旅行のためか2人が体調をくずした。1人は医者に診て貰うほどだった。もう練習どころではなかった。その時点でいい成績は無理と判断して、海外旅行を楽しもうということになった。

 コンクールではモーツアルトのセレナーデとF・ヒダスのテューバ四重奏曲を演奏した。演奏後見知らぬ人まで控え室に「よかったよ」と言いに来てくれた。というわけで無事2次審査にも通り午後から本選になった。本選は「シドニー・トロンボーンカルテット」、「国立ユーフォニアム・トリオ未来」、それに私たちの3チームで競われた。無事に演奏を終えてしばらくの休憩後、そして会場で審査員の紹介後、J.O.H.S.Euphonium Tuba Quartetの名前が呼ばれた。演奏者の紹介かと思っていると大声で「優勝よ」というではないか。本当に信じられなかった。

 また私はソロ部門で入選することができた。コンクールではメル・カルバートソンさんやゲストプレーヤーが気さくに意見や助言をしてくれた。私は技術的にはもう一歩だが音色がとてもいいと褒められ、ぜひ次のフランスでの大会(残念ながら妊娠して参加できなかった)に参加するように勧められた。その後コンサートで演奏させてもらったり、演奏を聴いたり有意義な日々を過ごした。

 日本との違いを感じたのは「ブラボー」という声援が本当にすごいことだった。海外の人は感情表現がすごいと思った。また挨拶で直ぐにキスしてくるのにも少し戸惑った。

 コンクール以外で印象深いことはシドニーの町で起きた。町を散歩していたある日、シドニーセントラルステーションの構内で吹奏楽団がクリスマスソングを演奏しているのに出会った。

 私は自分が演奏家なので彼らの演奏にとても興味を持って演奏を聴いていた。演奏の合間に楽団員と「どこのメーカーの楽器を使っているの?」とか「私も楽器をやっているのよ」などと話していた。するとその様子を見ていた指揮者に突然「指揮してみないか」と誘われた。私はびっくりしながらもその場ののりで指揮をすることにした。後で写真を見たら私の後ろで指揮者がちゃんと指揮をしていた。私は自分の指揮で演奏されているものと思っていたのだが。指揮者は私が演奏家と知らなかったのだろう。
  日本だったらいくら興味津々の聴衆がいても指揮をさせることなどないだろう。フレンドリーでびっくりした。私にとって思い出深い出来事になった。
(Januar 2008)

(注)ジョーズ(J.O.H.S. Euphonium Tuba Quartet)
 1996年、仲村淳(Tuba)秋岡一夫(Tuba)鈴木理愛(Euphonium)岡村由香里(Euphonium)の4人で結成。東京、山形、仙台などでの公演のほか、仙台ブリティッシュ・ブラスバンド・スペシャルコンサート、仙台ユーフォニアムテュ−バフェスティバルなど数々のイベントにゲスト出演。1999年12月にシドニーで開催された「Tuba Mania 国際コンクール」室内楽部門で優勝、会期中にはコンサートを開催し好評を得る。その様子は雑誌PIPERSなどでも大きく取り上げられた。2007年、新メンバーが加わり、更なる進化を遂げている。2008年3月CD発売予定。

【筆者紹介】
岡村由香里(おかむら・ゆかり)
  長野県出身。尚美学園短期大学、東京コンセルヴァトアール尚美卒業。94年第10回ヤマハ金管新人演奏会、また96年第12回ヤマハ金管新人演奏会に出演。二度の出演は本人のみである。98年第15回日本管打楽器コンクール、ユーフォニアム部門において第5位入賞。99年オーストラリアシドニーにて行われた「TubaMania国際コンクール」ソロ・ユーフォニアム部門入選。ユーフォニアムを後藤文夫氏に師事。現在ソロ、アンサンブルなどの演奏活動を行う傍ら、指導者としても活躍中。