韓国から出張で日本へ来ました。今日はキムチ屋さんの社長宅に泊めてもらう予定です。彼の家には出張のたびに泊まっています。彼の家族が韓国へ来たこともありますし、もう親戚のような付き合いです。
彼と知り合って15年以上になりました。初めて日本へ来て日本語学校へ通っていた時に、アルバイトをしたのがきっかけです。当時、私はまだ日本語ができず、初めて働いたカラオケ店で差別を受けた上に解雇され、不安な毎日を過ごしていました。
先輩の紹介で働くことになったキムチ会社は従業員が10人ぐらいで、彼は当時その会社の専務でした。私はそこでキムチをデパートやスーパーに運ぶ仕事を始めました。私は幸い国際免許を持っていましたが、韓国は左側通行なのに日本は右側通行でしたから、慣れるのに時間がかかりました。また東京の道を全然知らなかったので、それを覚えるのも大変でした。
一番大変だったのはやはり交通事故です。私は2年間で3回も事故を起こしてしまいました。そのたびに専務、つまり現在の社長が駆けつけて、まだうまく日本語を話せない私のために相手と交渉してくれました。さらに驚いたことに彼は「これから気を付けてね」としか言わなかったのです。社長も同じでした。
またあるとき私はデパートの搬入時に大失敗をしてしまいました。
配達人はお客とは違う入り口から品物を運び入れなければならなかったのに、私はそれを知りませんでした。しかも時間がなかったので客用のエスカレーターを使ってキムチを運んで転んでしまったのです。箱が壊れてキムチのパックが飛び出しあたり一面に散らばってしまいました。あわてて拾いましたが、デパートに大変な迷惑をかけてしまいました。当然デパートから会社へ厳しい電話がかかってきました。でもその時も私は「これからは気をつけて」と言われただけでした。もちろん私は会社のために一生懸命働いてきましたから、会社もそれを認めてくれていたと思います。けれども、だからといってこんな大失敗を一言で済ますなんて、考えられませんでした。
彼は正月に招待してくれましたし、いろいろよくしてくれました。私は日本へ来る前に日本人は冷たいと思っていました。しかし実際には嫌なこともありましたが、彼をはじめいい人にも大勢出会うことができました。これが日本へ来て一番よかったことだと思います。(談)
(写真は、家族と一緒のKim Ihkwanさん=中央)