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ノルマンディーの結婚式


by 和田かをり (日本)

  昨年8月、娘のはるかがフランス人のギヨムと彼の故郷ノルマンディーで結婚式を挙げた。

 フランスでは、結婚式は市長が立ち会い、市庁舎で挙げることになっている。たとえ教会で挙式するにしても、結婚は法的なものであり、無宗教でとの思想から生まれた制度らしい。

 コッセル市では副市長が5人いてその内の1人が結婚式担当の副市長だった。また、日本の市庁舎と違って、市庁舎に隣接して素敵な式場が併設されていた。その庭は、結婚式場にふさわしく、バルコニーがあり、バラ、ベゴニアなどの花で、溢れていた。

 おもしろかったのは、2人の結婚を8月27日に挙げるという告知書が結婚式の前に市役所に10日間張られたことだった。日本にはない制度だ。

 結婚式のやり方は教会での挙式とは違っていた。副市長の挨拶があり、その後、結婚に関する義務などの法律を1つ1つ読み上げた。結構細かいことまでも、いちいちフランス語と英語で読み上げるのでかなり時間がかかった。どちらかが借金を負った場合、2人でその収入に応じて借金を返済しなければならないという項目はおもしろいと思った。

 最後に「貴女はギヨム・サルズを夫にしますか?」と問われ、「ウィ」と答えた。その後は教会の結婚式に近いようだった。証人がいるのは、スウェーデンと同じ。

 披露宴は、農場を改造し注文に応じてパーティーができるようにした郊外の古い大きな披露宴専用の建物で開かれた。アメリカと同じように、テーブルセッティングなどの準備は自分たちでほとんどした。ウェディング・ドレスに合わせてフランスで買った布でテーブル・クロスを縫ったり、燃えない半透明の紙にメニューをプリントしてキャンドルのカバーを作ったり、草花の種が埋め込まれている手漉きの紙で席札を作ったり、庭でのカクテル・アワーのために木に吊るすランタンを作ったり、出席者に渡す引き出物のチョコレートの包装など全てを自分たちで用意した。いとこ達も、さまざまな形で、手伝ってくれていた。家族皆で、この大きな出来事を盛り立て、祝っているのが、良く伝わってきた。会場作りはその家族のセンスが問われると思う。はるかは花などの指示も細かく、かなりいい雰囲気の会場が用意できたと思う。テーブルクロスは丹精込めて縫い上げたせいか、宴会場の担当者から売ってほしいと言われた。

 披露宴は午後6時から始まる予定だったのだが、お天気が良かったので、5時頃にはかなりのお客さまが見えて、庭でギヨムのお父さんのレセピーで注文して作ってもらったカクテルなどを飲み始めた。ギヨムの従兄の親子が終始ノルマンディー古来の楽器である、バグパイプとボンバルト(クラリネットに似ている)を演奏してくれたのが、とても素敵だった。8時半頃に建物に入ると、メイン・テーブルに新郎新婦、その両親、4人の証人が座った。日本で花嫁、花婿の両親が最下位に座るのとは、大きな違いだった。

 結局、食事は夜の9時に始まった。午前零時ごろには親戚で編成されたバンドの演奏でダンスが始まった。いわゆる社交ダンスだけではなく、みんなが参加できるフォークダンスのようなものもあり、お年寄りや子どもにも楽しめるようになっていた。テーブルがセットしてある横に同じぐらいのスペースがあって食事をしながら踊りたい人はそこに行って踊り戻ってはまた食事を続けるという具合だ。最後のにデザートが出たのは夜中の2時頃だった。

 パーティーは夜中続き、終わったのは朝の5時だったそうだ。翌朝の8時まで続いたパーティーに出席したこともあるという人もいて、これにはびっくりしたが、フランスでは珍しくないらしい。親戚は日本と同じようにご祝儀を包むけれど、友だちは、お金のほかに食器とかお花とかいろいろだそうだ。

 後で日本から子連れで参加していた人たちは「これって、幼児虐待じゃないの。」と冗談を言っていた。フランスの社交では、子どもはどうするのだろう。アメリカの結婚式では、保育園のように、高校生くらいの人が子供たちを集めて、交代で遊んでやっていた。宴会場には4つの寝室があって、私たちは途中で寝室に引き上げて寝てしまったので、その後のことは分からない。子供は、そこに寝かせるようにということなのかもしれない。

 こんな盛大な純フランス式の結婚式をしていただいたので、12月の日本の結婚披露宴も、丁寧に計画しなければ、との思いを新たにした。

 去年出席したメキシコの結婚式でも朝の4時までダンスが続いたということなので、想像はしていたが、最近の日本のように、3時間でお開き、という方が珍しいことなのかしら? アメリカで結婚式に出席した時も、やはり、夜中ダンスをしていたらしい。こう考えると、インド、デンマークの結婚式に招待された時に出席しておけば良かったと思う。
〈2006年08月掲載〉