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任友慧さん

一緒に働いているおばさんたち


by 任友慧 (中国、早稲田大学教育学部2年)

 スーパーマーケットでのアルバイトが一年経ちました。一般の店と違って、そのスーパーの従業員の特徴は「おばさん」と呼ばれる五、六十代の中年女性が多いことです。職場も一種の小さな社会だと言われています。職場という身近な場所でおばさんたちと知り合い、アルバイトをしながら常に異文化も体験できます。そして、自分が体験したものを母国の文化と比較することによって、異文化への理解がよりいっそう深められます。それでは、私の目で見た異文化というものを述べたいと思います。

 何といっても、最初はやはりおばさんたちのお化粧です。普段の生活の中でも職場でもおばさんたちの化粧した姿が見られます。最初日本に来たときは、おばさんのお化粧についてなんとも不思議だなあと思いました。中国の場合は女性は年を取るにつれ、化粧をやめてしまいます。職場のおばさんたちはみんなお洒落で、口紅・メークなどを使うのももちろん、髪の毛を紫色に染めた人もいます。仕事が終わって着替える時、みんな手持ちの鏡を見ながら、崩れた化粧を整えます。ある日、私はいつものとおり「お先に、失礼します」と挨拶したとき、あるおばさんが「若いから、化粧しなくても綺麗ですね。羨ましいなあ。もしおばさんが素顔のままだったら、相手に失礼ですよ。」と言いました。これで、私はおばさんたちの化粧する理由が分かりました。身だしなみがよくないと、見苦しくて相手に不快感を与えるからです。では、中国のおばさんはなぜ化粧しないのですか。それは決して化粧したくないというわけではありません。時間と金銭的な負担はさておき、この年になってお洒落なんて恥ずかしいという考えを持っている人が多いです。これは中国の伝統的な考え方ですが、賛成できないと思います。女性の化粧は美に対する憧れで、生活に積極的な態度が現れます。

 次に、おばさんたちも日本人の誇りである「まじめさ」を持っています。職場での具体的な話をすると、仕事の隅々まで「まじめさ」が浸透しています。仕事の前に、必ずほかの従業員と顔を合わせて、「おはようございます」を言います。帰る前には、「お疲れ様です」もいつも忘れません。中国人の場合は全員に一言で済ませるのが多いようです。また、おばさんたちは仕事の遅刻が非常に少ないし、残業がしばしばあります。仕事が決められた時間帯に済ませられなかったので、このまま帰ってはいけません。この点については、中国人はちょっと甘いところがあります。

 そのほか、スポーツに夢中になっているおばさんが少なくないのです。おばさんのほとんどが主婦なので、空いている時間を有効に利用します。スポーツクラブに通った後に職場に来るケースがしばしば見られます。これは健康志向という考え方が日本人のおばさんに与える影響だと考えられます。中国のおばさんたちが朝、公園でラジオ体操をしたり、太極拳をやったりする光景はよく見かけますが、スポーツクラブに通う例は極めて少ないでしょう。また、最近日本のおばさんたちの中で韓流ブームが生じ、多くの人がその流れについていきます。特に「ヨン様」と呼ばれるベ・ヨンジュンさんが人気者で、職場でのおばさんたちはみんなヨン様の大ファンになっています。ヨン様の顔写真をイメージした小物を集めたり、韓国へ旅行に行ったりすることをおばさんたちは楽しみにしています。ここから見ると、日本のおばさんたちはまだ少女のような恋心が残っているのではないでしょうか。

 職場で体験した異文化はたくさんあります。よく考えてみたら、「お化粧」にしろ「まじめさ」にしろ、日本人のやさしさと相手に対する思いやりの心が見られます。ほとんどが戦後生まれ、「バブル崩壊」を経験したおばさんたちは今の生活をとても大事にしています。自分を愛するとともに他者をも愛し、思いやるとも言えるでしょう。おばさんたちと一緒に働いて、私はますますおばさんたちのことをすばらしいと思うようになりました。もちろん、いろいろ欠けているところもありますが、以上の二点だけでも大切に生かしたいと思います。これからも職場で、おばさんたちからさまざまな異文化体験ができたらと期待しています。
  可愛く、素敵なおばさん!
〈2006年01月〉