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千羽鶴が叶えてくれた願い


 アットクーロワ・メーリバン (キルギス、ビシケク人文大学2年)

 

アットクーロワ・メーリバン
アットクーロワ・メーリバン さん

 まだ小さかった時、母が本を買ってくれました。絵がいっぱいあってとてもきれいで面白そうな本でした。本には、色々な折り紙の作り方が紹介されていました。私は母といっしょに人形、魚、犬、鳥など、折り紙をたくさん作って遊びました。すごく楽しくて、私は折り紙がいっぺんに好きになりました。

  その本には千羽鶴の伝説についても書いてありました。伝説によると、ツルを1000羽折ると願いが叶うそうです。そのころ私たちはキルギスの南部の町オシュに住んでいました。私は12歳の時からオシュの道場で合気道を習っていました。合気道を習い始めて1年がたった頃、オシュで初めて「日本の日」という行事が開催されることになりました。「日本の日」の5日前、合気道の先生が「日本の日にはみなさんも合気道の発表をすることになりました」と言いました。

 初めての「日本の日」のプログラムで、私たちも発表するのです。私はびっくりしましたが、うれしくて、家に帰るとすぐに妹たちに「日本の日」のことを話しました。妹たちも大喜びです。みんなで相談して、日本の日までに1000羽鶴を折ろうと決めました。私たちにはひとつの夢、願い事があったからです。私たちは、弟がほしいと思っていました。

  「日本の日」までの5日間、みんなでがんばって毎日200羽ずつツルを折りました。とても大変でしたが、夢が叶うように、みんながんばりました。5日目には両手の指がぜんぶ痛くなってしまいましたが、3人で励ましあってとうとう1000羽のツルを折り上げることができました。私は、妹たちと力を合わせて やり遂げたのだからきっと夢が叶う、と思いました。

  「日本の日」の当日、日本の大使に私たち3人が折った千羽鶴を受け取ってもらいました。小さな女の子がたった3人だけでツルを1000羽も折ったことに大使はとても驚いていました。そして、「あなたたちの作った千羽鶴は、必ず広島に届けますからね」と約束してくれました。

  それからしばらくして、みんなが楽しみに待っていた赤ちゃんが生まれました。女の子でした。でも、赤ちゃんが生まれると弟か妹か、そんなことは関係ありませんでした。私たちは、小さな かわいい家族が1人増えたことをとても幸せに思いました。この小さな妹も、大きくなったら私たちおねえちゃん3人といっしょにお母さんのお手伝いをしてくれるようになるでしょう。

  千羽鶴のおかげで私たちの願いが叶いました。みんなが心を一つにして夢が叶うことを信じて1000羽の鶴を折りました。そして、私たち家族には夢をひとつにできる仲間がまた1人増えたのです 。
(2018年1月19日掲載)