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日本に来たかった


 アイサタ・ディアキテ (マリ)

Dimitrova
アイサタ・ディアキテさん

 

−ディアキテさんは大学院で勉強しているそうですが、どうして日本で勉強しようと思ったのですか。

ディアキテ:子供のころ、「(名探偵)コナン」や「(NARUTO)ナルト」などの日本のアニメを見て、日本に興味を持つようになりました。NHKも見ていましたし、自然に日本が好きになったんです。それでいつか日本に行こうと思いました。一生懸命働いてお金がたまったので、3週間日本旅行をしました。

−遠いですからずいぶんお金がかかったでしょう?

ディアキテ:ええ、多国籍企業で働いて、ためたお金を全部使いました。飛行機代で23万円ぐらい、全部で40万円ぐらいかかりましたが、とても楽しかったんです。日本に来て一人でいろいろ観光して日本人に親切にしてもらいました。道がわからなかった時に目的地まで連れて行ってくれた人もいました。その時絶対に日本に来て勉強しようと決めました。

−40万円ためるのは大変だったでしょう。マリの人はどのぐらいもらっているんですか。

ディアキテ:2万5000円ぐらいです。でも1Kのきれいなアパートでも家賃は2000円ぐらいですし、食べ物も例えば牛肉でも1kg500円ぐらいで安いですから、十分生活できます。
私は多国籍企業で働いていたので8万円ぐらいもらっていましたし、アパートも車も食べる物も全部会社が払ってくれましたから、生活はとても楽でした。

−そんな企業で働ける人は少ないでしょう。

ディアキテ:ええ、多国籍企業で働くためには英語が必要でした。そのためにガーナの英語学校で6か月勉強しました。英語は学校で全く習っていなかったので大変でした。短期間でマスターするために、3時間ぐらいの学校の授業の後プライベートレッスンを受けました。早くできるようになりたかったんです。

−6か月でできるようになるなんてすごいですね。でも大学でも英語を習わなかったんですか。

ディアキテ:ええ、私の家は貧しくて初めは学校に行かせてもらえませんでした。おじさんのおかげで小学校から中学まで行くことができました。高校は両親に行かせてもらいましたが、大学もガーナの英語学校も日本語学校も全部自分で働いたお金で行きました。

−そうでしたか。大変でしたね。

ディアキテ:ええ、両親は学校に行ったことがなかったので、どの学校がいいのかも知りませんでした。学校の宿題でわからないことは、近所の人に教えてもらっていました。他の兄弟は宗教の学校に行っていましたが、私はおじさんの子どもが行っていた、普通の学校に行くことができました。これはとても運が良いことで、おかげで大学に行くことができました。
マリは大家族が普通で、お父さんは2人の奥さんがいます。私のお母さんに子どもが5人、もう一人の奥さんに子供が6人いました。おじいさんに、おばあさん、おじさんたちやその子供たちがいますから60人ぐらいが一緒に暮らします。お父さんが働いていなくても、おじさんたちが働いていましたから生活はできていました。みんなで助け合うのがマリのよい点だと思います。

−そうですね。大学での授業料や生活費を稼ぐのは大変だったでしょう。

ディアキテ:ええ、いろいろな仕事をしましたが、政府の仕事が主でした。外国からのお客様を空港まで迎えに行ったり、会議の資料を作成したりいろいろやりましたよ。

−でも大学で勉強できてよかったですね。

ディアキテ:ええ、でも問題だらけでした。マリの首都のバマコの大学に行きましたが、学生が3100人ぐらいいましたが、教室に席が1000人分しかありませんでしたから、9時に始まる授業に朝の5時に行かなければなりませんでした。4人の友人と交代で席取りをしました。立っている学生もいましたし、窓から授業を聞いている学生もいました。

−1000席しかなかったら試験はできないでしょう。

ディアキテ:試験の時は他の大学が休みになって順番に試験をするんです。勉強を本当にしたかったですが、教授が少なくて、ゼミなんか100人の学生に1人の先生しかいません。その先生も忙しくてほとんど顔を見ることがないような状態だったです。でも卒業出来てよかったです。

−そうですね。英語ができるようになったおかげでいい会社で働くことができたし。

ディアキテ:ええ、そして今、日本で勉強しているなんて…。

−日本は物価が高いから大変でしょう。

ディアキテ:ええ、お金は持ってきましたが、いろいろアルバイトをしています。スーパーの魚屋で盛り付けや掃除をしたり、お弁当工場で働いています。ホテルでも働いています。ホテルの経営者が本当に良い人で、日本語が全然できなかったので始め面接で落とされてしまったんです。フロントの人が欲しかったようです。でもその後掃除ならできるだろうと雇ってくれました。その後、日本語ができるようになったので、フロントで働くことができるようになりました。今は舞子さんの芸を見に来る外国人のための通訳をしています。

―いい人に巡り合えてよかったです。でも世界中どこでも同じですよ。いい人も悪い人いますから。

ディアキテ:でも日本には泥棒がいないと思います。

−そんなことないですよ。気を付けて。

ディアキテ:私は何度も財布やスマホを落としたことがありますが、いつも戻ってきました。

−運がよかったんですよ。自転車盗られたことがないんですか。

ディアキテ:ありましたが、あれは泥棒じゃありません。1kmぐらいのところに置いてありました。

−傘だってなくなるでしょう。

ディアキテ:傘は盗られたことがあります。でも泥棒された気がしないんです。

−そうなんですか。では日本の生活はそう悪くないってことですか。

ディアキテ:ええ、京都学園大学の修士課程の1年生で勉強が大変ですが、授業の後で先生が個人的に教えてくださるので助かっています。大家さんもいい人ですし、でもアルバイトもしなければならないから時間がないんです。

−仕事もしなければならないから忙しいでしょうね。卒業後はどうするんですか。多くの留学生が日本で働きたいと言っていますが。

ディアキテ:私はマリに帰りたいです。経営学を勉強しているので、それを役に立てたいんです。マリは貧しい国です。今は外国の企業に資源の多くを持って行かれています。マリは金がたくさん採れますが、そのうちマリが得るのは20%、残りは外国企業の利益です。私はこれを何とか変えたいと考えています。

−そうですか。知りませんでした。日本も貧しい時代がありました。マリがよくなるように祈っています。ありがとうございました。
(2017年7月2日掲載)