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親子関係


 イルチェヴァ プラメナ ディミトロヴァ (ブルガリア)

Dimitrova
イルチェヴァ プラメナ ディミトロヴァさん

 どんな国でも親子の関係が非常に強いと言っても間違いはないだろう。世界の普遍的な事実である親子の愛情は日本でももちろんよく見られる。だが、ブルガリアの子育てを日本の子育てと比べたら、やり方が違うと最近気が付いたのだ。どうして違うのかは社会的・文化的な深いテーマだと思うので、簡単に答が見つからないかもしれないが、例をいくつか挙げてみる。

 まず、自転車に乗っている母親とその幼い子の姿を紹介したいと思う。
来日してから、毎日北浦和などの道を歩くといつもその姿を見て、とても嬉しいと感じた。それは親子の愛情の証明の例の一つだ。初めてそれを見たとき「あ、危ない!」と思っていた。でもよく考えれば、そのように母親はどこかへ出かけなければならないときも、子供と一緒に行って、教育を続けられる。子供達も喜ぶだろう。お母さんと一緒にいて、外の世界について楽しく学ぶのではないかと思う。

 ブルガリアではその姿が全く見られない。なぜなら、自転車に乗るのが危ないので、法律的に子どもを自転車に乗せるのも違反だ。それだけではなく、お母さんたちが運動不足で、出かけても、ベビーカーを使って、出かけるのだが、そのベビーから回りの景色などが見えるかどうか不明だ。そのため、ブルガリアの場合では子どもが受動的にしか外の世界について学ばないと思う。

 もう一つの例は負んぶしてあげる母親の姿だろう。ときおり子供が二人でも、負んぶしてあげる母親も見たことがある。国ではそんな姿も全く見られない。どうしてだろうかよく分からない。日本で子供のために何でもしてあげるお母さんたちは優しくしてあげるだけではなく、色々教えてあげることもする。

 具体的に言えば、先週、電車に乗ったとき、赤羽駅でお母さんと子ども二人が乗ってきた。一人はお母さんの胸に抱っこされていて、三歳に見えるもう一人は、お母さんの手をしっかり握っていた。そのとき、電車が混んでいたので、座る席がなかった。私は座っていた席から立って、譲ろうと思っていた。でもそのお母さんは「すみません、大丈夫です。窓から見てみたいです。」と言って、断った。そうするとすぐ三歳の子に「ありがとうと言ってね。優しいお姉さんが席を譲ってくれたよね。でも私達は窓からみたいね。」と言った。

 どうして断ったのだろうかと私は悩んでいた。もしかして外国人だから恥ずかしかったのだろうか。ブルガリア人のお母さんならすぐ座っていたと思う。でも、考えれば、多分子どもにレッスンをしたかったかもしれない。そして、その後、言葉通りに負んぶしていた子に「今、窓から何が見えた? 犬が見えた? 家が見えた? 見たの? 何をみたの?」などと優しく聞いた。新しい言葉なども数多く二人の子供に教えてあげていた。その気配りは素晴らしいと思った。

 日本とブルガリアを比べても、両国の親子の愛情そのものは疑わない。だが、子育ての違うやり方があると、日本にきて気が付いただけだ。そして、日本の母親の一生懸命な努力には非常に感動させられて、尊敬する。この文章でその憧れがどうか伝われば幸いだ 。
(2016年12月30日掲載)