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映画館で驚いたこと


 ヴィラソロ デルフィ―ナ マリア (アルゼンチン)

ランディカ・ジャヤミニ
ヴィラソロ デルフィ―ナ マリアさん

 私は国では、映画を見に行く習慣がある。友達や恋人同士で映画を見に行ったりする。また作品を見た後感想を交換し、ブログやウエブサイトなどで意見を述べることが普通である。したがって、日本で滞在している間に同じような体験をしようと思った。そこで、文化の違いを発見して、大変面白いと思った。ここである一日に気づいたことを紹介する。

 ある日、友人と一緒に映画を見に行く約束をして「バクマン」という漫画に基づいた作品を見ることにした。元々あまり知られていない話なので、おそらく観客が少ないだろうと思いつつ映画館に入った。するとその通りだった。最初に驚いたことは一人で行っていた人が一番多かったことである。アルゼンチンでは友達や家族と一緒に行くことが普通で、逆に一人で行く人は他の人から見ると寂しそうなイメージがある。そのときにそれは日本で普通のことだと思ったが、今考えてみたらおそらくレートショーだったからだと思う。そして、席についてから一人の友達はお菓子を出して、みんなに配った。そのときに気づいた。キャンディーバーも確かにあったのに、食べている観客が1人もいなかったことである。国と同じようには最初から最後までお菓子が食べられないと思って、少し恥ずかしかったから、こっそりとチョコレートを少し食べて、かばんの中にしまった。

 「バクマン」の映画は確かにユーモアがあるだけではなく、真剣な話も含まれている。それは「少年ジャンプ」という有名な漫画雑誌の日本の出版社の職場が舞台になっている。そして、二人の高校生は自分の漫画を描いて、その作品が売れるかどうかの戦いをしながら普通の高校生活もおくらないといけないという話だった。それにしても、映画としてはとても面白くて、「少年ジャンプ」を読んでいる人は知っている冗談も入っている。だから、そのようなシーンが出たときに、研修生と三人で大笑いしてしまった。それは当たり前のことだと思っていたが、私たちはまるで皆に迷惑をかけていた印象を受けた。なぜなら、他の観客は沈黙して、誰も笑わなかったからだ。とても不思議だと思って、もしかして寝ているかもしれないと思いながら、後ろを向いて他の人をのぞいてみた。みんなは普通に集中してスクリーンを見ていたようだ。このようなシーンは三回ぐらいあったのに、同じ反応でびっくりした。

 このような意外な反応については2008年に日本に来たとき驚いたこともあり、今回もその時のことを思い出した。それは絶対泣かないシーンで大泣きした女性の思い出である。「脳男」という映画を日本の映画館に見に行って、最後に悪人が撃たれたシーンで、後ろに座っていた女性はみんなハンカチを持って泣いていた。そのときまでかなり暴力的な映画で周りの方はそこをあまり気にしていいなかったらしいが、悪人が亡くなるシーンで泣くことはとても不思議だと思った。

 いよいよ「バクマン」のエンディングシーンが始まって、国と同じように最後に拍手をした3人はまた目立ってしまった。他の観客は映画が終った瞬間に立って、映画館を出ていた。私たちは最後まで残って、映画の感想を交換しながら「バクマン」の主題歌を楽しんだ。

 最初は、一人で映画を見に行ったり、面白い場面で笑わなかったり、終わった後も拍手をしなかったりして、それは映画を楽しんでいないように見えた。しかし、今考えてみればこれは映画を楽しめたかどうかと関係なく、ただ映画館の中のマナーや習慣が違うだと考えられる 。
(2016年11月26日掲載)