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日本の「言わない」文化


 ドフィタス クリストファー ヴィンセント ラーディザーバル (フィリピン)

ランディカ・ジャヤミニ
ドフィタス クリストファー ヴィンセント
 ラーディザーバルさん

 子どものころから、わたしは「静か」が好きである。静かな場所、静かな夜、静かなパーティー。もちろん、にぎやかな町やパーティーも好きだが、静かのほうが好きだ。七年前、一番好きな「静か」を見つけました。それは2人の日本人との出会いで「静かなやり方」を初めて経験した。一人はわたしが日本へ来る前に出会った。もう一人はわたしが国へ帰る前に出会った。どうして「静か」と呼ばれているか、それはその2人の日本人が何も言わないで、素晴らしいことをしてくれたからである。

 2008年3月。日本人の学生がわたしの大学に見学に来た。

 彼はわたしの家に一泊泊まる予定があったので、一日中わたしが大学や町を案内してあげた。その夜、ベルギーに住んでいるおばさんがフィリピンに帰ってきて、わたしの家族と食事する約束があって、家族と日本人の学生と一緒にレストランへ行った。そのとき、わたしはもう3年間日本語を勉強していたが、なかなか日本語で話せなかった。案内の担当もうまくできなかった。それは悔しかった。そのうえに、日本人の学生をおばさんに紹介したとき、彼はフランス語で話した。ペラペラだった。わたしは彼に「どうやってそんなに上手になりましたか。」と聞いた。「たくさん話してみた。間違えても話してみた。そうしないと、上手になれない。」と答えた。それから、食事が終わって、帰った。彼の言葉がまだ頭の中に残っていた。

 翌日、お別れの日だった。彼は日本へ帰る。準備しているとき、彼は自分の部屋にいなかった。でも、後ろから、彼が来た。わたしの部屋に入った気がした。出かける前に、もう一度わたしの部屋を見ると、机の上にきれいな葉書が置いてあった。彼はわたしが日本へ行くことに緊張しているのを知っているので、励ましのメッセージを書いてくれた。レストランで教えてくれた言葉よりこっそり置いた葉書の言葉のほうが印象的だと感じた。その励ましの言葉を持って、二週間後、日本へ来た。

 2009年3月18日。帰国の日。

 最後の一週間はさよならパーティーばかりだった。できるだけ、日本で会った人に会いたかった。やはり、会えなかった人は多かったが、メールやフェスブックでその人たちからメッセージをおくってもらった。好奇心のある友達は「どうやって空港へ行くの?」とメールで聞いた。「わたしは空港バスで行く予定なので、多摩センター駅へ行かなければならない。」とわたしは答えた。荷物が重すぎるので、バスで駅まで行こうと決めた。駅へ行くバスが来ると、アパートの前にあるバス停で三人の友達とあっけなく「さようなら」を告げた。

 多摩センター駅のバス停に着くと、好奇心のある友達がいた。何も言わなかったので、わたしはびっくりした。なぜはっきり見送りをするつもりのことを伝えなかったかと彼女に聞いた。返事が思い出せないが、彼女が袋をくれた。お菓子と飲み物だった。「空港までおなかがすかないように」と説明した。わたしのほうから、「ありがとう」しか言えなかった。そして、彼女は空港バスが来るまで、わたしと話してくれた。その時間が来たら、わたしはまたあっけなく「さよなら」を告げた。

 チケットを買いに行こうと思ったが、運転手さんに「1か2?」と聞かれて、わたしは何も答えなかった。大きなミスに気づいた。便のターミナルを確認できなかった。ネットもなかったので、調べられないとわかった。ぼうっとなった。「2でしょ?」と彼女が言った。何もわからないわたしはうなずくしかできなかった。彼女がいなければ、もっと大変なことになるとわかった。空港バスに乗って、彼女の手を振っている姿を見えなくなるまで、感謝を持って手を振った。彼女がいてよかった。

 その2人の友達が何も言わないで、素晴らしいことをしてくれた。わたしにとって、それは日本の「言わない文化」の一つだと思う。フィリピンでは、その文化はあまり強くないと思う。なぜなら、多くのフィリピン人は直接に言う人だからである。もらう人の反応を見たいからと思う。しかし、その直接なやり方で何かをしてくれれば、わたしは照れ臭くなって返事もできなくなってしまう。それに対して、わたしにとって、「静かなやり方」は相手の性格を考慮しながら、相手を困らせないで、びっくりすることでもっと感激的な思い出になると思う。いつか、その2人の日本人の友達にちゃんと「ありがとう」を伝えたい。静かなやり方で 。
(2016年8月19日掲載)