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裸よりノースリーブが恥ずかしいか?


 ジニー・マイケルズ (アメリカ)

ランディカ・ジャヤミニ
ジニー・マイケルズさん

 国によってどんなことが恥ずかしいかというコンセプトがたいぶ違う。あなたなら、裸で入浴することと、真夏にノースリーブを着ることと、どちらが恥ずかしいと思うだろうか。

 2003年に初めて日本に到着した私は、飛行機に乗っている時に読んだガイドブックのこと以外、日本語や日本について何も知らなかった。しかし、せっかく日本に来たので、何でも体験したかった。そのため、最初の休日に一人で鎌倉に行ってみたかったけれども、やはり、日本語が分からず失敗して、箱根に着いてしまった。

 仕方がないと思って、またガイドブックをかばんから出して、箱根についてパッと読んだ。ブックによると箱根なら温泉が有名なので、温泉に行くことにした。温泉に入る時、みんなは裸で一緒に入浴することについても読んだ。入浴は私の好みに合ったけれども、他の人と裸で入浴するのが楽しくなさそうだと思った。

 しかし、「郷に入っては郷に従え」という表現を思い出して、いちばん近くて、安い温泉を探して、そこへ直接すすんだ。選んだ安い温泉は英語が話せる店員がいなくて、看板も日本語だけで書かれていたので、とても外国人向きではなかった。当時「男」と「女」という字さえ読めなかった私はとても違和感を感じたが、頑張って、かばんや靴をロッカーに入れて、ちゃんと裸になってから、自分が煮られるほど熱いお風呂に入った。初めての温泉の体験はあまり楽しめなかったけれども、慣れてきたら、温泉も楽しめるようになると思って、温泉を諦めなかった。12年後の私は、何回も温泉に入ったことがあって、かなり慣れてきたので、楽しめるようになった。しかし、友達や知り合いと温泉に入ると、今でも少し恥ずかしくなる。

 2003年を振り返って、次のようなことを思い出した。箱根に行った同じ週に当時の上司が高級とまでは言わないが、少しよいレストランに連れて行ってくれた。8月なので、東京はとても蒸し暑かった。それで、その夜私はノースリーブでレストランに行ってしまった。テーブルに座ってから、上司に「寒くない?」と言われて、「ううん、大丈夫!」と答えてしまった。後で、その夜を少し反省していた。上司の言い方には、何らかのニュアンスが含まれていると思った。しばらく日本に滞在してから、不思議なことに気が付いた。日本では、死ぬほど暑い日なのに、ノースリーブを着ている人があまりいない。なぜだろうか。日本人はノースリーブを着ているのが恥ずかしいと思っているのか。恥ずかしいのかどうか分からないけれども、ノースリーブを着ている人はいない。仮にノースリーブを着ているのが恥ずかしいとすれば、これは少し矛盾していると思う。温泉なら、みんなと裸で入浴するのは恥ずかしくないと思われているが、真夏日にノースリーブを着ているのは恥ずかしいと思われている。アメリカで厳しく暑い日にはノースリーブを着ているのがあたりまえだが、裸で他の人と入浴するのは、酷く恥ずかしい。

 やはり各国ではどんなことが恥ずかしいかというコンセプトがだいぶ違う。日本では、温泉か銭湯なら、みんなと裸で集まるのが自然だが、米国ならみんなと裸で集まる習慣がないので、そうすると恥ずかしくなる。そのことから、各国の人の考え方がだいぶ違うということがよく分かる。
(2016年7月19日掲載)