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裸の付き合い


 サントス カルロス ルイース ロペズ (フィリピン)

ランディカ・ジャヤミニ
サントス カルロス ルイース ロペズさん

 自分の国ではまさか外国の文化に触れ合って困ることがあるとは思ってもいなかったが、今年そのような経験があった。今年の二月からKというフィリピンに来ていた広島から来た日本人の留学生と仲良くできて、彼は私の家に半年もホームステイしていた。部屋が一緒だったので、文化の違いでお互い色々驚いたことがあったが、その中で一番印象的なのは、裸で見られることに対しての無神経さだ。

 彼の一泊目に、彼は部屋の中にあるバスルームを使うとき、「今日はまだ風呂入っとらんけえ、入っていいん?」とコテコテの広島弁で聞いた。方言のせいで私は最初ちゃんと理解できなかったが、とりあえず「オッケー」というと、彼は私が部屋にいるにもかかわらず服を全部脱いで、全裸でバスルームに入った。私はびっくりしたが、なぜ彼はそういうことを平気でやったかを考える間もなくて、彼はまたすぐバスルームを出て、「タオル借りていい?」と聞いた。私はずっと彼の顔だけを見て何も言えず箪笥の方を指さした。「ありがとう!」と笑顔で彼が言った。すると私はほっとして「あっ、タオルがなかったからしようがなく全裸でバスルームに入ったんだ。普通は日本人もタオルで下半身を巻いてバスルームに入るだろう」と思うと彼は箪笥から取ったタオルを肩に掛けて風呂に戻った。

 風呂から上がったときもまた肩にタオルを掛けたままで部屋に戻ってタオルを持って「これ、どこに掛ければいい?」と聞いて、私はまた無言でドアの裏側のフックを指さした。彼はタオルを掛けて、全裸でスーツケースの前でしゃがんで、寝る服を出して、着た。それでやっとまた彼と話せるようになった。

 その後、私がお風呂に入っていた間に、彼はノックもせずにバスルームに入って、歯を磨き始めた。歯を磨いてからまだバスルームの中にいて、私とお喋りをしようとしていた。そのとき私は驚いたが、気まずくならないように平気なふりをした。逆に、彼は全然恥ずかしそうに見えなかったので、私が初めて彼の家に泊まったような気持ちだった。

 しばらくすると彼の広島弁にも、二人での日常生活にも慣れてきた。ほぼ毎日一緒にいて、まるで日本人の兄弟ができた状態だったが、彼の一泊目でびっくりしたことはまだ会話には出てきていなかった。ある日、一緒にお酒を飲みながら彼は初めて家に泊まったころを懐かしく語っていた。そのとき私はやっと聞けた。「日本人って全裸での姿を見られるのは恥ずかしくない?」と聞くと彼は「兄弟とか同じ男性の友達は普通なんよ。あと、銭湯に行ったらみんな裸じゃけえ普通なんよ」と説明した。同じような質問をされて、私は「兄弟だったらかまわないけど、友達や知らない人に見られたらすごく恥ずかしいよ。でも、もう、慣れてきた」と言った。すると彼はこう言った「良かった。でも俺、最初からカルロスの事は兄弟みたいに思っていたから大丈夫じゃろう。これからもよろしくなあ。」

 今でもお互い定期的に連絡を取っていて、くだらない話から家族にも言えない悩みまで話し合っている。日本に来てつい最近習った表現だが、まさにあの友達と本当の「裸の付き合い」ができた。
(2016年6月21日掲載)