日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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玄関


 エンフアムガラン・オノン (モンゴル)

ランディカ・ジャヤミニ
エンフアムガラン・オノンさん

 日本の家は私の国モンゴルと比べて独特の特徴を持っている。それは家の玄関だ。先日、訪問したホーストファミリーの家であったエピソードを紹介したいと思う。

 日本のどの家庭の家も玄関に色々な飾り物や写真を置いてあるのが目に付く。今回のホーストファミリーの家も飾ってあった。日本に来る前にホーストファミリーの応募を決めていたため、どんなお土産を買おうかなとかなり考えていた。ウランバートル市にあるお土産の店やデパートのお土産コーナーなどに行き、気に入った物を探したがなかなか見つからなかった。その日は諦めて帰り、今度行こうと思った。

 二度目はもともとお土産を買うつもりで出かけたのではなく別の目的で外出していたのだが, ようやく気に入ったモンゴル民族衣装を着た王様とお姫様の人形を買うことが出来た。それほど大きい人形ではないが箱入りで, 日本に来日する際ケースの中に箱が壊れないように入れ、無事にさいたま市に到着した。

 とうとう、ホーストファミリーの家へお邪魔する日が近づいて来て四歳と二歳の息子がいることを知りアンパンマンのお菓子セットを買い人形と一緒にお土産として差し上げることにした。ホームステイの日が来た。子供たちは元気で家に入るとアンパンマンのおもちゃがいっぱいで私はアンパンマンのお菓子を買って良かったと思った。

 晩御飯にはお味噌汁、ネギフライ、肉ジャガをごつそうしてもらい、肉ジャガはモンゴルの家庭料理にも作られていて、とても懐かしくておいしかった。ネギフライも甘くておいしかった。料理を食べ終えたところ、私はお土産を差し上げた。

 子供たちはアンパンマンを見て嬉しそうにすぐに開けて食べ始めた、ホーストファミリーのお母さんも人形を『とてもかわいいですね、ありがとうございます』と言ってくださって気に入った様子だった。そしてどこに置こうかなと自分と話しながらリビングルームから出て行った。玄関の方から『ここにしよう』と言う言葉が聞こえる。私はその言葉を聞き『えっ、何で?何で玄関?頑張って色々探したり、色々考えたり、色々迷いながら買ったので玄関に置かれるなんてちょっと。』と思った。

 モンゴル人にとって『玄関』は靴を置く所で外に着た物、履いたものを脱いで家に入るという決まりで日本の家とそれほど違いはないはないが、大切な物を置く場所ではなかった。学校から帰って来た子供は本、ノートが入ったランドセルやかばんを玄関に置くとお母さんに叱られる。私も時々かばんを玄関に置いて母に叱られる時があった。

 一泊二日はあっという間に終わり、お別れの時が来た。私は玄関にあった色々な写真をゆっくり見た。お父さんは一枚一枚の写真を説明して下さり『この写真は今年の夏休みの時』、『これは七五三の時の写真』と言って下さった。

 一番奥にあった写真に私の目が止まった。ホーストファミリーのお父さんとお母さんの結婚写真だった。私の顔にいつの間にか笑顔が浮かんだ。私は勘違いしていた。一番大切な所に人形を置いて下さって、とても嬉しくなってほっとした。

 大切な物を置く『所』は別々だったが、大切な『場所』はどこの国もあることが分かって色々勉強になったホーストファミリーの二日間だった。
(2016年5月31日掲載)