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国の顔


 トルダクノワ・ベガイム (キルギス国立総合大学)

トイレには、それはそれはきれいな女神様がいるんやで、
だから毎日きれいにしたら、女神様みたいにベッピンになれるんやで。

 これは、「トイレの神様」という日本でとっても有名な歌だそうです。私は初めてこの歌を聞いたときに、カルチャーショクを受けました。なぜトイレについて歌うのでしようか? 不思議に思いました。正直に言って、歌の歌詞は全部わからなかったのですが、曲が気に入ったので、歌の言葉を気にせずに、メロディーだけ聞いていました。

 私は日本の音楽、日本の料理、日本の文化が大好きです。だから、大学の勉強以外に、夏休みはキルギスで初めてオープンした日本料理のお店でアルバイトを始めました。これは私の人生で初めての仕事でしたので、とっても緊張しました。店長も厳しい方に見えたので、私はできるだけ店長のいうことをしっかりやって、必死に働きました。

 そのお店でアルバイトをしたおかげで、私は日本のサービスの特徴、そしてマナーについてたくさん学びました。

ベガイムさん
トルダクノワ・ベガイムさん

 ある日、私は店長に呼ばれて、「今日から掃除の仕方を教えます」と言われました。そして、トイレの掃除の仕方を30分ぐらい教えていただきました。私の頭は真っ白になりました。ウエイトレスのアルバイトに応募した私はどうして掃除をしなければいけないのか、理解できませんでした。しかもトイレまで掃除するのは私はいやでした。でも、店長の言うことに反対できなかったので、我慢して、掃除をしました。

 そして、次の日にお店に来たら、店長がトイレの掃除をしていたのです。それを見た私はびゅっくりして、「なぜ店長が自らトイレを掃除しているのですか?」とたずねました。すると、店長はお店の掃除は毎日、皆でやる仕事ですと説明してくださいました。

 店長の言うことによると、トイレは私たちの「お店の顔」だそうです。そして、人は自分の顔をきれいにして、化粧して、大切にするのと同じく、お店のスタッフはお店の顔、つまりトイレを毎日ピカピカにするのが大事だと言います。トイレがピカピカになれば、お店もきれいになり、お店を使うお客さんはいつも気持ちよくお店にいられると言います。

 キルギスではウエイトレスは掃除作業はやりません。特に店長みたいな偉い人は絶対にやらない仕事です。掃除は汚い仕事で、トイレは汚くて当たり前だと考える人が多いです。この考え方が正しいのでしょうか?

 店長の話を聞いて私は考えさせられました。人は自分だけではなく、自分の周りの環境もきれいにすることが大切だと思います。

 私は将来、日本の「トイレの神様」という歌でおばあさんが教える話をキルギスの若者に教えたいです。もし、小さいころから子供にトイレをきれいに使うことを教えて、気持ちよく生活ができたなら、成長したときに自分の子供やまごにも同じことを教えるでしょう。そして、いつかキルギスの顔がピカピカになることを夢見ています。「国の顔」がきれいになって、外国からの観光客も増えて、キルギスが世界にアピールできるもっとステキな国になってほしいです。

 皆さん、もし日本に行くとしたら一番見てみたいところはどこですか? 日本にはディズニーランドや京都、奈良、そして富士山など見るところがたくさんありますが、私が日本で一番見てみたいところはトイレです。
(了)

(2015年8月23日掲載)