日本体験 外国体験 Experiences in different cultures
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日本人の行列文化


 レ・ジェウ・フエン (ベトナム)

ランディカ・ジャヤミニ
レ・ジェウ・フエンさん
 今回を含めて日本に来るのは3回目になった。この3回の来日を通じて日本語や日本文化はもちろんだが、いろいろな体験もできた。しかし、この中で不思議で、興味を持っているのは日本人の行列の文化である。

 日本人はお年寄りから子供までどこに行っても何かを待っても騒がずにきちんと行列を作って、自分の順番まで待っている。この文化は外国人の私にとってとても面白くて、素晴らしい文化だと思う。特に、2011年3月の東日本大震災の時、どんなにおなかがすいても日本人はきちんと行列を作って食べ物を待っていた。騒ぐことも暴力もなかった。この話はベトナムだけでなく、世界中にもとても有名である。また、電車に乗る時、日本人は列を作って、降りる人が降りてから自分が乗るということも素晴らしい。私の国には行列という文化はほとんどないため、このような日本人の行列の文化に興味を持ち、より知りたいと思っていた。

 行列の文化を知るため、日本人の知り合いと話してみた。彼女によると、外国人にとって行列は文化だが、日本人にとってはただの習慣だそうだ。なぜかというと、これは子供の時から、駅や映画館、そして他の公衆のところに行くとき、彼らはよく先生と親に「きちんと行列を作りなさい!」と教えてもらったからである。毎日教えてもらったため、この習慣を自然に身に付けてきた。つまり、この文化を教えるのは学校とともに家庭である。

 逆に、ベトナムでは学校で学生たちはいつも先生に「ちゃんと行列を作りなさい」と言われたが、家庭では全然教えてもらわなかった。これは親は教えたくないというわけではないが、ベトナムでは学校以外に行列を作るところはほとんどないからである。日本には駅、映画館、スーパーマーケット、レストランなど並ばなければならない所はたくさんあるが、ベトナムでは駅もレストランも行列を作らない。これは日本とベトナムの行列の文化に違いをもたらす理由の一つだと言える。

 また、今日本では「食べ物の行列」というのがよく見られる。たとえば、おいしいラーメンやケーキ屋さんなら、30分か1時間待ってもきちんと並んでいる。この話を聞くと、自分の経験を思い出して、なるほどだと思った。それは友達と回転寿司の店に行ったときだった。私たちが行ったその店は満席だった。そして、私たちの前に来たお客さんは10人ぐらいいた。しかし、みんなは落ち着いて席に座って家族と話をして自分の順番まで待っていた。ベトナムではこういうことは絶対にない。30分待つのならみんな他の店を探しに行く。だから、日本人がこのように待っているのは不思議だった。

 最近、日本のレストランや店ではとても便利なサービスが出たそうである。それは携帯で予約して、空席があればレストランのほうから電話がかかってくるというものである。お客さんは行列を作らなくてもうちで自分の順番まで待つことができる。社会が発展すると行列もだんだん楽になるのではないだろうか。

 また、私の知り合いの経験を通じて、日本全体に行列の文化があるというわけではないということが分かった。彼女が大阪に行ったときのことだった。彼女が電車を待っているときにいろいろな人は列に並ばないでうしろから先に電車に乗った。彼女によると、東京に行ったらどこに行っても行列が見られるが、大阪や田舎のところの場合は行列を作らないこともよく見られるそうだ。つまり、行列の文化は地方によって違うと言えるだろう。

 次に、なぜ日本人は行列を作るのかという理由を聞くと、これは公平だからだそうである。行列を作らないで急に列に割り込むのは日本人にとってとても行儀の悪い行為である。もし体が不自由な方や子供なら譲ってもいいが、普通の人なら待てばいいという意見が出た。このような話を聞いて、もし日本人はベトナムか行列の文化がない国に来たらびっくりするかもしれないだろうなあと思った。

 私の日本人の先生から次の話を聞いたことがある。ちょうど彼が私の大学で日本語を教えに来るとき、私の町に大きなスーパーマーケットが開かれた。そのスーパーのパンはとてもおいしいそうなので、多くの人が並んで待っていた。私の先生もきちんと待っていた。突然ある人が途中で先生の前に割り込んできた。私の先生はとても怒って、その人に文句を言い始めた。しかし、先生は日本人だからその人は理解できなくて、先にパンを買ってしまった。

 初めてベトナムに来た私の先生はこのことを見てとてもびっくりして、私たちに話をした。ベトナムではきちんと行列を作っても必ず途中で行列に割り込む人がいると私たちが言うのを聞いて、理解してくれた。これはもう3年前のことだが、最近ベトナムの行列の意識はより高くなったと思う。特に若者の行列の意識である。なぜかというと、社会が発展して、彼らはいろいろな文化に接することができたからである。また、最近ベトナムの映画館、スーパー、デパートが行列の規定をだんだん強めてきたことも一つの理由だと思われる。

 日本人にとって、行列も話をするチャンスの一つだそうである。自分の順番まで待っている間に家族や友達にいろいろな話ができるからである。そのおかげで待つ時間も短く感じられる。また、「いろいろな人が並んでいるから必ずいいことが私たちを待っている」という前向きな考えで日本人はいつも楽しみながら行列を作っている。ベトナムでは面白くても長い時間を待たなければならなかったら落ち着かなくて途中で帰る人も大勢いる。これはもしかしたら日本人とベトナム人の性格が違うのではないだろうかと思っている。

 日本人の行列の文化は世界によく知られている。これは世界が見習うべき文化だと思う。ベトナムでは最近、行列の習慣が定着してきて、人々の行列の意識はだんだん形成されつつある気がする。私は日本に来てから日本人の行列の文化を見てとてもいい文化だと思った。自分もその文化を身につけて、将来自分の子供にも行列の意識を教えたいと思う。
(2014年6月16日掲載)