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日本の数字文化


 ロス二ザ (マレーシア)

ランディカ・ジャヤミニ
ロス二ザさん

 あるテレビ局が行った調査によると、日本人が好きな数字は1位「7」、2位「3」、3位「8」という。「7」はどこの国にも、ラッキーセブンから幸運のイメージがあるかもしれない。神様の天地創造の七日など、神秘的な霊能を感じる宗教的な数字としても知られている。「8」は「八」という漢数字の形から「末広がり」と言われ、好まれている。幸せが末永く続くようにという意味を持っている。マレーシアでも中国系の人にとって縁起がいいと好まれる数字である。「8」が入っている車のナンバープレートが、非常に人気があり、高額で取引されている。「8」が入っているナンバープレートを見ると、きっと中国系の人の車だと思うほど中国系の人の間で人気がある数字である。数字に関する好みやイメージは国や民族、宗教などによって違いがある。ある国の人がこの数字は縁起がいいと感じても、他の国の人にとってそうではないこともある。では、「3」はいったいなぜ日本では上位にあるのだろうか。

 教えていた大学の勉強会のとき、教科書に「結婚3高条件」という言葉が出てきた。日本人の同僚が、日本人は「3」が好きで、日本語には「1」や「2」ではなく、「3」が付く言葉が多くあると説明してくれた。「三人寄れば文殊の知恵」、「石の上にも三年」、「三度目の正直」など格言やことわざが多くある。3が付く会社の名前も結構ある。例えば、「三菱」、「三越」、「三井」などである。また、「三冠」、「三枚目」、「御三家」や「三人娘」のような言葉もある。野球の世界では、背番号「3」の長嶋さんは非常に人気がある。なぜ日本人は「3」という数字にこだわっているのだろうか。

 答えを探るために、ある60代の日本人の友人に聞いてみた。日本人が「3」にこだわっている理由は、次の3点が考えられるという。第一は、奇数は古来より中国で縁起がいい数字だと日本にも伝わってきた。日本の13の祝日がほとんど奇数の日であり、その中で、日本人が最も奇数を重視することを説明できるのは、11月15日の「七五三」である。いわゆる「節句」は「1月1日」、「3月3日」、「5月5日」、「7月7日」と「9月9日」奇数が重なる日に設定されている。さらに、俳句の構成も「5・7・5」である。ご祝儀も奇数にこだわっている人が多いそうだ。結婚式のご祝儀は3万や5万の奇数が多い。単純に考えると、奇数は「2」で割れない数字である。「2」で割れると、「別れやすい」と言われ、結婚式では嫌われる数字だそうだ。

 奇数の中でも、「3」は「調和」や「安定」を表している数字だと言われているそうだ。例えば「三拍子」は太鼓・小鼓・笛などの3種類の楽器で拍子を取ることである。その3つがうまく揃えば、素晴らしい演奏になる。そして、「3」は最も区切りがよく、物事の始まりを表す神聖な数字だそうだ。第二は、「3」は「満つ」や「充つ」という同じ発音の言葉があり、非常におめでたい数字だと言われているそうだ。第三は、「1」と「2」は点や線でしかないが、「3」になって初めて面が完成し、すべてが揃うという。ついでに、日本人が嫌う数字も友人に聞いてみた。「4」は「死」、「9」は「苦」につながるので、日本人が嫌う数字だそうだ。

 私が来日し、面白いと思っている日本の数字文化は語呂合わせである。数字列の読める音を当てはめて、意味が読み取れる縁起担ぎの単語や文章に置き換えることである。日本では「1192」を「いい国」と語呂合わせにする。11月22日は「いい夫婦の日」ということで、婚姻届を出すカップルが多いそうだ。インターネットで見ると、いろいろな面白い数字の言葉が出てくる。「5963」は「ご苦労さん」、「1371」は「意味ない」、「14」は「意思」などたくさんの言葉がある。なぜ日本人は数字を語呂合わせにし、数字で遊ぶことが好きなのだろうか。

 コマーシャルで電話番号を単語に置き換えることをよくテレビで見かける。例えば「117」は「いいな」に置き換える。また、「4649」は「よろしく」になる。それは覚えたい数字を覚えやすくするための一つの工夫である。コマーシャルで流すことで、より効果的な宣伝になるのではないかと思う。

 日本人にとって、数字は言葉の一つだと考えられる。初詣などで、お賽銭は「5円」にして「ご縁」があるというのはよくあることだ。外国人から見ると、5円はあまりにも少額で、お賽銭にする金額ではないと考えるだろう。しかし、日本人はお賽銭を寄付とはあまり考えない。金額の大小よりも「縁起」を担ぐことの方を優先するのである。この場合、数字よりも言葉の方が力を持っていることになるだろう。数字を言葉として見てみれば、また違う風景が見えてくるかもしれない。数字は科学的というよりは「言葉」で、ときには「人間的」のように思う人もいる。日本人の数字はより立体的で、より愛嬌があるのではないか。

 日本人はなぜ数字に強いのだろうかずっと不思議に思っていた。日本の数字は漢字やローマ数字も使い、読み方も多様である。数え方でも、読みは変わる。日本語を勉強している外国人にとって、非常に難しい。数字に対する考え方が「多様」であるからだと言える。考え方が多様であるほど、物事を正確に理解できることになるだろう。例えば、一か所だけから物を見ても、その裏に何があるか一生分からない。英語に数字の語呂合わせもある。例えば、「to」は「2」、for」は「4」、「great」は「gr8」に書き換えることで、短くメッセージを書くことができる。ところが、英数字の読み方は多様ではないため、語呂合わせし難いという話を聞いたことがある。

 数字で遊べる日本文化は非常に面白いと思う。日本人にとっての数字の大切さや言葉から切り離せない日本の文化について少し分かってきた気がする。
(2014年5月19日掲載)