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スリランカと日本のバレンタイン・デー文化


 ランディカ・ジャヤミニ (スリランカ)

ランディカ・ジャヤミニ
ランディカ・ジャヤミニさん

 バレンタイン・デーと言えば、世界中の誰にでも、恋人、チョコレートなどの言葉が頭の中に思い浮かんでくるのは当然である。英語での"Saint Valentine's Day"は日本語に直訳すれば、「聖バレンタインの日」と言う意味である。これはそもそも毎年2月14日に行われ、恋人同士で愛を確かめ合う日と知られている。いったい、なぜこんなイベントが始まったのだろうか。伝説などによると、西暦3世紀にローマでは結婚が禁止されたのに、恋人同士を助けてあげて、こっそりと結婚させてあげた、教会の司祭のバレンティヌスを尊敬するためにヨーロッパでは特別な日を決めて、それを「バレンタイン・デー」と呼ぶようになったそうだ。自分が愛している人に愛情を伝える日として広まっていったようだ。現在は世界のどこでも老若男女を問わず、バレンタイン・デー文化が流行するようになって来た。

 そもそもバレンタイン・デーという習慣はスリランカにはなかった。国際化の一つとして20世紀の後半にスリランカに入って来たため、恋人同士が贈り物やカードを交換する習慣を始めた。ただし、2008年に自ら日本でバレンタイン・デーを体験してから、スリランカと日本のバレンタイン・デー文化には大きな差があるのを見て疑問に思った。日本人はこういった日の本来の意味を忘れているのではないだろうか。それをきっかけとして、ここで日本人若者と年配の方の意見を聞いて、両国のバレンタイン・デー文化を比較して見ようと思った。

 スリランカではバレンタイン・デーと言えば、2月14日と限定されているが、日本ではその同じ日にともなって、3月14日のホワイト・デーが登場する。日本独特のバレンタイン・デーは、女性が男性にチョコレートなどのお菓子を贈ったり、憧れの男性がいたら愛の告白をしたりするために利用されているそうだ。この日には男性のほうから、何も返してこないのが特徴である。自らの憧れの人にはどうしても高級なチョコレートやプレゼントを贈りたくなると若い女性が意見を述べた。なぜなら、自分からの本当の気持ちを相手側に分かってもらいたいからだそうだ。しかし、女性から贈り物をしただけで、愛情を伝えられるのだろうか。「聖バレンタインの日」はそもそも愛情を伝える日だったはずだ。

 日本でしか見られないホワイト・デーの際、バレンタイン・デーに女性からもらった気持ちを認めるという意味で男性のほうから女性へとチョコレートを返す習慣があるそうだ。それに女性からもらった贈り物の3倍を返すという考えがあるそうだ。しかし、愛情を伝えるというバレンタイン・デーのそもそもの意味を満たしているのだろうか。日本人は世界のどこにもなかった新しいやり方を世界に紹介したといっても過言ではない。現在は恋人同士だけでなく、友達同士や社員同士の間でも行われるようになってきた。贈り物としてチョコレートが大人気の日本では、家族やお世話になった人へと贈るチョコレートは「義理チョコ」で、同じ日に渡し合ったりするのは「逆チョコ」である。また、友達同士で「友チョコ」を渡し合えば、自分のため買っておく「自己チョコ」も盛んである。こういった日本の影響を受けて最近韓国や台湾や中国などの国々でもホワイト・デーが行われるようになってきたようだ。

 新しく入って来たせいか、スリランカでは大人の目で見るとバレンタイン・デー文化は認められていないが、日本では大賛成を得ているそうだ。愛情を伝えるのはともかく、一緒に日常生活で頑張っている人にチョコレートを渡したら今までより、親しみを感じるし、逆に自分にも気分転換になるという考えがあるそうだ。だから、スリランカでは恋人同士の間でしかお祝いしないのに対して、日本では広い範囲で広まっているのではないだろうか。それは、お菓子業界の商業的戦略だからだという。代表的なブランドとして「GODIVA」が挙げられる。1月下旬になるとデパートや商店街がチョコレートやバレンタイン・デー用のお菓子であふれていく。その結果、結婚している夫妻、子供同士でも行われるようになり、上司や同僚、ただの友人などの恋愛感情を伴わない相手にもチョコレートを贈るようになったそうだ。すでに、大人でも渡し合うようになり、日本では欠かせないイベントになってきている。文化的なイベントと同じく若者や大人の大参加が見られる。現代の若者において、なくてはならないお祝いになっているが、年配の方の話によると、年齢と関係なく毎年義理チョコをもらうので、返すのは面倒くさいと思われる大人もいるそうだ。本当の意味を忘れて、別の方向へと向かっているバレンタイン・デーには価値がないと語る人もいる。お互いに愛情を伝えるのはともかく、いくつかの業者が商品を販売する目的は満たしているという。

 日本の中学校や高校ではこの日になるとチョコレートを渡す仲間同士や交際中の恋人同士が数多く見られるそうだ。若い人の話によると、公立・私立変わりがなく、バレンタイン・デー文化に対してルールは厳しくなさそうだ。しかし、日本ではただ勉強をしているよりは楽しいからバレンタイン・デー文化があったほうがいいという若者が多いらしい。こんな文化の影響を受けると生徒達の勉強への集中が減っていくのではないだろうか。

 いずれにしても、スリランカではヨーロッパと同じく、恋人同士でチョコレートに限らず、プレゼントも渡しあったりするのは普通である。ただし、誰でもお祝いする一般的イベントにはまだなっていない。社会的に評判が悪いため、親の目から見ると、自分の子供にはお祝いさせたくないヨーロッパ風のイベントらしく見られている。また、スリランカの学校では、バレンタイン・デー文化が禁止されているのみならず、同級生同士の恋愛関係も認めない。当時期になると我慢できないほど商店街は赤いハートやバラの花にまぎれても、生徒がバレンタイン・デー文化に関した行動をした場合、退学をさせるようになるほどの罪になる。私立高校ではルールは少しゆるいかも知れないが、いずれにしても社会的には認めない。

 非常に意味深い「聖バレンタインの日」、つまり「愛の日」のそもそもの意味から離れて、強制的にチョコレートやお菓子を買わせる日本型バレンタイン・デーにはあくまでも大人が意識を持って行動をする必要があると思う。 (了)
(2014年2月15日掲載)