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エジプト人との結婚 1


 加緒里 (日本)
ピラミッド
【写真は、加似「さん(左)とイハーブさん夫妻】

−加緒里さんはエジプト人のイハーブさんと結婚していらっしゃるわけですが、どのような縁で結婚することになったのですか。どこで出逢ったのですか。

加緒里:アラブ料理屋です。

−アラブ料理屋に何か珍しい物を食べに行ったんですか。

加緒里:私は助産婦だったんですが、友人と死ぬまでに世界中に行こうと話していました。いろいろな国に行ったんですがエジプト旅行があまりに楽しくてもう一度エジプトに行きたくなりました。遺跡のスケールが大きくて、見る物見る物に感動しました。それに人がとても人なつっこくて明るいんです。

−英語で話したんですか。

加緒里:英語や簡単なアラビア語ですね。日本語ができるガイドさんから簡単なアラビア語を教えてもらったんです。その挨拶のアラビア語を言うとみんなすごく喜んでくれました。

−それは楽しいですね。

加緒里:それに食べ物が口にあったんです。旅行で行ったときには嫌なことが何一つなかったんです。それですっかりエジプトにはまってしまったんです。彼と知り合う前に3回行きました。最後に行ってしばらく経つとエジプトの料理が食べたくなって関西でエジプト料理のレストランを探したんですがありませんでした。シリア料理の店があったので似ているかなと思って行ってオーナーシェフに「実は私、エジプト料理が好きなんです。シリア料理も味が似ていますよね」などと話していたら、「彼エジプト人だよ」と教えてくれました。たまたまその日レストランにテレビの取材が入っていて、彼が通訳として来ていたんです。私がエジプト大好きなんでアラビア語を習いたいけど大阪にはアラビア語の教室がないと言うと、彼がボランティアで教えているところがあるよと言いました。その日は仕事で来ていたのでメールのアドレスを交換して詳しい場所などを聞くことにしました。私はエジプト人の知り合いができるかもととても嬉しくて帰って直ぐに現地のガイドさんと友人で撮った写真をつけてメールしました。次の日夜遅かったんですが電話がかかってきて、「あの写真に写っているのってアーデルだよね。幼なじみだよ」と言いました。世の中狭いねって話しが盛り上がりました。それから1年半か2年ぐらい仲がいい友だちとして付き合っていました。

−でも、お互いに第一印象がよかったんでしょうね。

加緒里:それが全くそうじゃなかったんです。お互いに。2年ぐらい友だちだったのがかえって良かったかもしれませんね。外国人と親しい友人になったのが初めてだったので、カルチャーショックがたくさんあって、最初はよくけんかしました。

−えっ、どんなことでけんかしたんですか。

加緒里:ドタキャンです。エジプトに住んでよく分かったんですが、男性同士の付き合いが重要視されて、男性のほうを断ると直ぐに付き合いが悪いと言われちゃうんです。でもカチンと来ましたね。今考えると友だちとしてけんかができる仲だったのでわかり合えてよかったと思います。

−それでどうして結婚することになったのですか。

加緒里:一緒にエジプトに行ったのがきっかけだと思います。友だちだったんですがエジプトの友だちに色々言われてお互いに異性として意識するようになったんです。それから交際が始まって1年ぐらい経って彼の留学が終わってエジプトに帰ることになったので、どうするかということになりました。私には仕事がありましたし。

イハーブ:私は11年日本にいたので帰国してからエジプトでやっていけるかわからなかったので2人で帰るわけにはいかなかったのです。それで遠距離恋愛になりましたが、1年後にお互いに結婚するかどうか決めることにしました。

−当時はまだスカイプもなかったでしょう。

イハーブ:それで良くメールしましたが電話代が大変でした。エジプトに帰ってから普通のエジプト人とはどこか違うと感じたし、エジプト人の女性に魅力を感じなくなっていました。彼女と一緒にいられたら楽しいなと思うようになり、1月1日に国際電話で結婚しようと言いました。3月にご両親に挨拶に行って5月には結婚しました。

−でもそうなるだろうと思っていたんでしょう。

イハーブ:そうでもなかったです。

加緒里:国際結婚する人も周りにいなかったし、彼の家族にも反対されると思っていました。日本人は親が反対したからといって結婚をあきらめないじゃないですか。でもエジプト人って今でも親が一番なんです。

イハーブ:やっぱり祝福してもらいたいんです。

加緒里:昔の日本みたいです。駆け落ちなんてありえないですし。

−じゃあ、1月1日にプロポーズするときには家族の承認を得ていたんですね。

イハーブ:夏からずっと説得していました。外国人だからということもありましたが、加緒里は何度か友だちとして家族に会っていて、ありのままの姿を見せていましたから。

−そうでしたか。結婚したときはカイロ大学で日本語を教えていたから、結婚生活はエジプトで始まりましたね。暮らしてみてどうでしたか。

加緒里:旅行で行くのと暮らすのはやっぱり違いました。看護婦をしていると死を宣告された人の否定とか怒りとか死を受け入れるまでに段階があるんですが、海外に住む人もそれと同じ段階を踏むらしいですね。そのときはこのことは知らなかったんですが、後になってホントやと思ったんです。住んでいるとすごく不便なことや嫌なことがいろいろあって、一時期エジプトもエジプト人も嫌やとなったんですね。

−どんなことが不便だったんですか。

加緒里:まず、言葉が通じませんから。向こうの人はすごく親切なんで一生懸命聞いてくれるんです。下手くそな英語であろうが、アラビア語であろうが、めちゃくちゃな日本語であろうが身振り手振りでも嫌な顔せずに一生懸命聞いてくれるし、日本人のようにもう時間がないからというような人がいないんですが、自分が思っていることを100%説明できない歯がゆさがストレスになって、そのうち日本と比較して日本ならこうやったのになあとか。

−例えばどんなことで。

加緒里:まず時間にルーズなこと。水道が故障したのでエンジニアに頼んだら1時間したら行きますというので待っていたら2時間経っても来ないとか、そういうことにいちいち腹を立てていました。断水停電も結構多いです。

−そうですか。向こうで働いていたんですか。

加緒里:はい、丁度ストレスが溜まっていたので気分転換になって良かった反面また日本人の社会に入ったので、もっとエジプトと日本を比べちゃうことになってそれぞれの嫌な面を見て胃を悪くしたりしたんです。そのうちにそういう気持ちを分かってくれる同じ立場の人と知り合いになりました。自分も同じ経験をしたけれどこういう風に克服したのよと助言してくれた人もいました。

−日本人の奥さん達が大勢いるんですか。

加緒里:大勢とはいえないけれど結構いましたね。働いていたので日本人と知り合う機会もありました。

−お金持ちのエジプト人と結婚している人が多いんでしょう。

加緒里:まあばらばらですね。アラブの石油王とかいうのではなく中の上ぐらいでしょうか。観光業界の人が多いですね。エジプトのガイドさんと日本の添乗員さんのカップルがすごく多かったです。

−そのほかの面ではどうでしたか。

加緒里:暮らしやすい面と暮らしにくい面がありますが、人間らしい暮らしができると思います。日本と違っていい意味であくせくしていない、時間にもお金にも。男性も仕事より家庭が第一です。エジプト人のスタッフが子どもが熱を出したから遅刻しますとか、休みますとかよくあって、日本人は驚いていました。奥さんがいないのかと思ったのですが、いても彼が車を運転して病院に連れて行かなければならないからと言っていました。奥さんが車を運転できないの、できるけど子どもがしんどくて泣いているからというようなやり取りがありました。

−そうですか。違いますね。(続)
(2013年7月13日掲載)