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エジプトの生活と日本語 2


 Ehab Ahmed Ebeid (エジプト)

イハーブ夫妻
【写真は、Ebeidさん夫妻】

−次に結婚や結婚式についてお聞きします。日本では結婚式や披露宴で座る席が決められていますが、韓国や中国ではどこに座っていいですが、エジプトではどうですか。

Ehab:結婚式そのものは身内だけでします。政府の公証人を呼んで式をします。結婚の書類にサインして日本円で3千〜4千円ぐらい手数料を払うと立会人が役所に届けてくれます。公証人は「マゾーン」っていうんですが、職業なんです。彼は給料をもらっています。正式な書類は3部、1部は役所に保存されています。1週間後に2部夫と妻が1部ずつ受け取ります。書類は写真付きですね。

−はっきりさせるためですね。イスラムでは何人も奥さんを持てるんですよね。

Ehab:4人です。でも実際にそうしている人は1%もいないです。経済的にも無理です。経済的に力があって、奥さんの理解があれば可能です。

−妻がいいと言うとは考えられませんね。

Ehab:そうです。今の女の人は拒否しますから複数の妻を持つのは無理です。それにもしもう一人もらうなら最初の妻と同じ愛情を注がなければなりません。絶対に平等にしなければならないんです。

−それは大変なことですね。

Ehab:人間っていうのはそんなことはできないです。

−で、サインした後パーティーがありますよね。

Ehab:どんちゃん騒ぎです。どうやるかというとステージを建てます。田舎のほうでは野外、お金がある人はホテルまたは結婚式場でします。船でする人もいます。ナイトクルージングですね。そう言う場合は2時間か3時間で盛り上げるんですね。主に新郎新婦の友だちが来ますね。歌ったり踊ったり食べたりします。

−その費用は誰が持つんですか。

Ehab:実は婚約式と結婚式があるんです。婚約式をやるときは女性が持ちます。

−えっ、女性が持つんですか。

Ehab:ええ、でも結婚式に比べると婚約式はそんなにかかりません。親戚と本当に近い友だちだけを呼んで家の中で指輪の交換をして食事をするですから。結婚式の費用は男性が持ちます。

−じゃ、大変ですね。お金がないと結婚できないじゃないですか。

Ehab:そうです。だから最近はお金がなくて結婚したがらない男性が多いです。

−住む家はどうしますか。

Ehab:男性が用意します。半分ぐらいの人は結婚の時に家を買います。親も援助してくれます。家具などは女性の親が買ってくれます。

−でも貧乏だったら結婚できませんね。

Ehab:女の人が納得したらできますよ。

−それはそうですね。貧乏でも結婚したければしてもいいですね。それで結婚式には何人ぐらい集まるんですか。

Ehab:まず招待状を作るんですが、結婚式場ならそんなことは起きませんが、田舎でやったら呼んでもいない人も来ますから。招待状を上回る人の料理を用意しなければなりません。近所の人が当たり前のように集まってきますから。行かない方が失礼に当たります。それがしきたりです。

−それじゃあ、料理などたくさん用意しなければならないので大変でしょう。

Ehab:ええ、当日朝から料理人を呼んで大きな鍋で作ってもらいます。新郎新婦がステージの上にいますから、お客さんはそこへ行ったり、バンドも呼んでいて音楽が流れていますから、みんな踊ったりしています。

−パーティーは何時間ぐらいするんですか。

Ehab:普通、夜9時頃に始まって夜中の2時頃までやりますね。

−8時頃から結婚式をして9時頃からパーティーをするんですね。

Ehab:パーティーの前に美容院に行った花嫁さんを迎えに行くのがしきたりです。彼女を飾りが付いた車に乗せて会場に戻ります。

−あれ、花嫁さんは美容院にいるんですか。結婚式の前に美容院に行くんじゃないですか。

Ehab:いいえ、花嫁は結婚式には参加しないんです。

−えっ。式に花嫁さんがいないんですか。

Ehab:はい、契約式みたいなものですから。

−じゃ、女性はサインしないんですか。

Ehab:花嫁の代理人がサインするか美容室に持って行って直接サインしてもらいます。

−じゃ、式は重要じゃないんですか。

Ehab:いいえ、とても重要です。でもエジプトでは重要なことは全部男性がしきるんです。

−そうですか。驚きました。花嫁さんは民族衣装を着ますか。

Ehab:いいえ、ウエディングドレスです。そしてベールの代わりに肌を見せないように白いヘジャブをかぶることが多いです。ですから、ハイネックのドレスに人気があります。それならベールを短くしてかぶることもできますから。

−パーティーの間は飲んだり食べたりしているんですか。

Ehab:ジュースは飲みますが、アルコールは出ません。パーティーの終わり頃にビュフェスタイルの豪華な食事が出てきてケーキを食べて終わりです。結婚式は楽しみな行事です。

−プレゼントはどうするんですか。

Ehab:結婚式の前夜に男性と女性、それぞれの家に集まってお祝いのお金をあげます。封筒に入れて名前などを書きます。お祝いのお金をあげない人も受け取らない人もいますし、前夜祭をしない人もいます。結局お金をもらったらまた返さなければならないからもらわない選択をする人がいるわけです。今はしない人の方が多いです。また、親戚の中には2人の新居を訪ねたそのときにお祝いのお金をあげる人もいます。若者たちは例えばティーセットなどのような必要な品物をあげる場合もあります。電気製品の場合もありますね。少しずつ変わってきています。前はお金でしたが、今は品物も増えています。

−日本のように2人のビデオや写真を映したりするんですか。

Ehab:結婚式場だったらする人もいますね。

−スピーチはどうですか。

Ehab:まったくないです。バイキングが始まるという合図のアナウンスだけします。みんなはひたすら2人がいちゃいちゃしているのを見ているのです。勿論ほとんどの人が踊っています。自分たちも楽しんでいるのです。久しぶりに友だちと会ったりできますし、そこで異性との出逢いもあります。でも直接異性に話しかけたりはしません。特に私は田舎だったので直接名前も聞けませんでした。そんな時は知り合いに聞くわけです。

−付き合いたいなあと思ったらどうするんですか。

Ehab:正式に申し込むんです。まだ交際は自由ではないです。大学で出会った場合も付き合いたいときは同じようにします。付き合っている人たちはみんな正式に認められています。勿論どんな社会にも例外はありますが。

−デートはどうですか。

Ehab:2人の他に誰かが一緒ということが多いです。勿論長く交際した場合は2人だけの時もありますが、親が認めなければそんなことはできません。

−大変ですね。でも女の人にとっては安全ですね。

Ehab:ある意味幸せかもしれません。

−ハネムーンはどうですか。

Ehab:お金持ちは海外に行きますが、ほとんどの人は国内旅行か、しない人もいます。

−出産は実家に帰るのですか。

Ehab:帰る人もいますが、実家のお母さんが手伝いに来る場合もあります。

−結婚した後、奥さんはよく自分の実家に帰りますか。

Ehab:しょっちゅうです。自分の実家と夫の実家に良く行きます。親との関係が深いです。親と子の絆が日本に比べてずっと強いです。近くに住んでいたら結婚しても週に1回は実家に行って食事をします。いろいろなお祝い事の度に実家に行きますし、電話も毎日のようにしますよ。娘も息子も親に電話するんです。親の元気な声を聞いて安心するだけでいいのです。私は親孝行したいと思っていたので週に1回、週末には必ず実家に帰っていました。億劫ではありませんでした。そこで兄弟に会うんですね。兄弟も多いですから、たくさんの子どもに囲まれて親も祖父母も幸せです。

−今、日本のように結婚しない人は増えていないんですか。

Ehab:男性でしたいけれど経済的にできないという人が少しずつ増えていますね。それで女性の結婚年齢も上がってきて平均25歳ぐらいになりました。大学を卒業してから直ぐに結婚する人が多いです。そしてみんな30歳を超えないように頑張ります。女の人は30を超えると結婚が難しくなります。

−そうですか。ところでエジプトでは男の人は何歳ぐらいで結婚するんですか。

Ehab:27歳ぐらいです。男の人がちょっと年上ですね。3歳とか5歳ぐらい違うのが普通です。

−日本は今女性が年上の場合も多いですね。私の息子もそうですが。

Ehab:エジプトではそういうことはないですね。男性が上で差があるのがいいんです。エジプト人の女性は精神的にも肉体的にも早く成熟していますから。悪い言葉で言えば老けて見えるんですよ。しっかりしすぎているんです。ですから若い方がいいと男性が思うんだと思います。

−女の人は働かないですよね。

Ehab:働く必要がなければ働きません。育児のほうに専念します。

−そうですか。もし何か困ったときは実家が助けてくれるんですか。

Ehab:勿論です。兄弟同士も助け合います。

−いとこはどうですか。いとこにも援助するんですか。

Ehab:私だったら援助します。

−絆が強いですね。また前に戻りますが、赤ちゃんが生まれたとき、日本だったらお宮参りに行ったりしますが、エジプトにも何かそういうお祝いの行事などがありますか。

Ehab:特にないですね。乳児死亡率は低くないんですが、何歳まで生きたら大丈夫だというような考え方がありません。ですから祝うのは毎年の誕生日ぐらいですね。

−そうですか。家族のことで特別な行事などはありませんか。

Ehab:特に祖先のためにということはありませんね。身近な両親のことを考えて絶えず訪問するだけですね。
(続)

(2013年4月22日掲載)