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スウェーデンの葬儀


  岡部グニラ(スウェーデン)

−スウェーデンのお葬式について教えてくださいませんか。

グニラ:スウェーデンではどの新聞にもファミリーページがあってそこに結婚、誕生、葬式などの情報がのっていますから、そこで誰が亡くなったか知ることができます。

−日本の葬式とどんな点が違いますか。

グニラ:一番の違いは日本のように葬式を直ぐにしないことです。だいたい10日ぐらいは棺に入れて冷蔵庫のようなところで保管しています。

−そんなに長く?

グニラ:ええ、ですから、日本のように最後のお別れはありません。初めて日本で最後のお別れをするために棺を開けたときはとても変な感じがしましたが、今はそれがとても好きになりました。ちゃんとさよならできる感じがします。こちらのおじいちゃんが亡くなったときに家族と一緒に棺にお花を入れたりしていいなあと思いました。亡くなったことが納得できましたし。

−ではお別れはしないのですか。

グニラ:私が大学の時は葬式の日ではありませんが見せる習慣がありました。大学生の時老人ホームでアルバイトをしました。最初の年に偶然ホームで亡くなった人がいました。みんなでお別れしながらきれいな平和な顔になったとか苦しんでいないとか言っていました。みんな喜んでいました。そのときいい習慣だなあと思いました。ところが次の年にアルバイトに行ったらその習慣はなくなっていました。次は誰かな、私かなと老人たちが考えるのがよくないからだそうです。でも年取っているから当たり前のことなんだと思いますが。

−そうですか。じゃ、誰も見られないのですか。

グニラ:そんなことはありませんよ。家族なら大丈夫です。叔母のとき私の兄弟2人が呼ばれて病院で棺の中の叔母にお別れしましたが、1番上の兄は嫌だと言って行かなかったんです。生きているときの思い出があるからと言っていました。私なら行ったと思います。日本ではお世話になったおばさんの葬式の準備をしたことがあります。とても感銘を受けましたし満足しました。

左から2人目がグラニさん
【写真は、親戚と一緒のグニラさん(左から2人目)】

−そうですね。ところでスウェーデンでもお葬式にお金を持って行くのですか。

グニラ:いいえ、スウェーデンではお金をあげることはありません。花をお墓に供えるのが普通です。でもさっき話した新聞の情報欄に花をもらう代わりに例えば癌の研究に寄付するとか赤十字に寄付するとかお願いしますと書いてあることがあります。

−いいことですね。

グニラ:ええ、私が福祉の仕事をしていたときに寄付してくれた人にカードを送っていました。花はもらえませんが、施設から寄付してくれた人の名前が書いてあるきれいなカードが送られてきます。それを大切にとっておきます。

−葬式はどう進められますか。

グニラ:普通は教会で式をしてそのあと墓に行って埋めます。土葬が基本ですが都会に住んでいる場合は焼くこともあります。そしてその後簡単なティータイムをします。スピーチをすることもあります。

−法事のようなことは?

グニラ:ありませんね。49日も一周忌も何もありません。私が一歳のときに父が亡くなりました。なくなったのは1月ですが毎年その日に何もしませんでした。父の誕生日は夏でしたがその日に庭で木イチゴを載せたケーキを作って食べたり、結婚記念日にちょっとお祝いをしたりしました。

−お墓には?

グニラ:10年とか20年とか区切りの時にお参りに行ったりします。でも必ず行くわけではありません。夏は毎週のように花を供えたり掃除をしたりしますが。それだけです。

−キリスト教でもお墓で拝まないのですか。

グニラ:祈りますが、そこにいないと思っているから、家で祈ります。

−家族の墓があるのですか。

グニラ:いいえ、個人の墓ですね。

−それじゃ、お墓がたくさん必要ですね。

グニラ:ええ、でもスウェーデンは人口が少ないから大丈夫ですよ。最近は作らないで海で散骨する人が多いです。それから墓と言えるかどうかわからないけど、小さくたくさんの人の名前が書いてある場所があります。事故とか自殺した人など若くして亡くなった人たちの場所です。石の代わりに花がたくさんあってとてもきれいな場所です。座るところがあって、そこで亡くなった人を思い出すことができます。墓地の中で一番きれいな場所です。昔はそんな場所はありませんでした。

−お墓の維持はどうしていますか。

グニラ:古い墓は教会が面倒見てくれますし、親戚がいればちょっと寄付したりもします。

−そうですか。
(2011年9月)