細いつながりが楽しみくれる
− 連載エッセー「徒然の森」第61回

by 北嶋 千鶴子

 正月に年賀状をもらうのは楽しみだ。もう何年も会ったことがない人からも届く。それどころか中には今までにたった1度しか会ったことがない人さえいる。けれどだいたいは、親しくしていたのに引っ越したり子育てで忙しかったりしたせいで、つきあいが途切れた人たちが多い。

 「年賀状には今年こそお会いしたいものです」と書くけれど、そのまま会わずに1年が経ってしまうのが常だ。だから相変わらず年賀状でしか近況がわからない人が多い。

 ときどき年賀状を出すのがおっくうになることもあるけれど、年賀状のおかげで若い頃の交際が復活することもある。去年はその中の2人とたびたび会うようになった。

 1人は子供が幼稚園で一緒だった人で引っ越した後、会わなくなっていた。電話をもらって直ぐに会い、今では健康のために週に1回ほど一緒に歩くようになった。もう1人は上智ボランティアセンターで働いていたとき知り合った。彼女は上智福祉専門学校の教師をしていたが、定年で暇ができたのだ。今ではもっぱら東京近郊の花めぐりを楽しんでいる。町田の菖蒲園、昭和記念公園のコスモス、クリスマスイルミネーションにも出かけた。

 2人とも何十年も会わなかったとは思えないほど直ぐにうち解けた。私にとって楽しみが増えた。これも年に一度の年賀状をやりとりして、細いつながりが途切れなかったためだと思う。たった1枚の年賀状が楽しみをくれたのだ。まだ年賀状だけの大勢の友達がいる。いつか彼女たちともの付き合いが復活することを楽しみに、年末にはまた年賀状を書き続けるだろう。
(Januar 25, 2007)