子供も仕事も
− 連載エッセー「徒然の森」第39回
by 北嶋 千鶴子

菊 少子化が叫ばれ、日本の将来は暗澹たるものだそうだ。一人の女性が一生に産む子どもの数が1.29と発表されたが、現在ではそれも下回っているかもしれない。昨年はとうとう日本の人口が減少に転じてしまった。

 私自身、子どもを産むために仕事を辞めてきた。仕事は楽しかったので、子どものためと言っても辞めたくはなかったが辞めざるを得なかった。長男の時は普通の民間企業に勤めていた。もちろん会社の規則には産休が取れるとあったが、結婚後も働き続けたのは私が最初だったのだから、産休などとても取れるような状態ではなかった。

 産まれたばかりの長男を母に預けて週に2回働き始めた。夫は宇都宮勤務だったから、赤ん坊を背負って毎週東京まで来なければならなかった。そんなに無理をしてなぜ働き続けたのかと言えば、辞めてしまうともういい仕事には就けないのではないかという思いがあったからだ。しかしその仕事も夫の新潟転勤と、妊娠が重なり辞めた。交通費がかかりすぎる上に、赤ん坊に3歳の幼児を連れて身動きできなかったのだ。

 子育てだけの時期は社会から取り残されたような気がしていつも早く働き始めたいと思っていた。子育ての大変さも身にしみていた。しかし私は懲りずに3人目の子を産んだ。

 今の若い人は生き甲斐のある仕事をしていたら、子どものほうを諦めてしまうのかも知れない。子育てにはお金も時間もかかる。もし社会が少子化を本当に阻止しようと思うならその両方に援助が必要だと思う。
(March 15, 2006)