中国観光地でも韓国パワー
− 連載エッセー「徒然の森」第24回
by 北嶋 千鶴子

 最近日本は韓国ブームだが、中国の観光地でも韓国パワーに圧倒された。
  行った先は中国湖南省の張家界国家森林公園。日本ではあまり知られていないけれど、張家界は奇岩が天を突くように立ち並び、有名な桂林と黄山の山水美を合わせもつといわれるほどで、世界遺産にもなった中国の代表的な観光地である。

 長旅の末やっと観光地に着いたら、あたり一帯は韓国人観光客であふれていた。次々にやって来るバスから降りるのはみな韓国人旅行者ばかり。どこへ行っても韓国語が飛び交っている。レストランに入るとキムチの匂いがする。それだけ韓国人旅行者が多いということなのだろう。

 道を歩いている私たちに、韓国語で話しかけてくる現地の人々も後を絶たない。韓国語がわからない私にも「〜ウォン」と呼びかけているのがわかった。桂林には「千円、千円」と呼びかけてくる「千円族」という物売りがいたが、張家界の彼らは多分「1万ウォン族」なのだろう。

 飛行機の中で隣り合わせた中国の大学生も私を韓国人だと思っていて、日本人だと言うととてもびっくりしていた。それほど日本人観光客は珍しいのだ。張家界は韓国人旅行者で支えられているらしい。

 韓国人観光客の中には私たちを日本人と知って「ヨン様」と日本語で話しかけてきた人もいた。「ヨン様」と言われるとこちらもつい笑顔になってしまって、和やかな雰囲気になるから不思議だ。それがきっかけで短い時間だったが話がはずんだ。彼らは「ヨン様」が日本でどう受け入れられているかをよく知っていたし、それを誇りに思っているようだった。
  私は日本語教師だからもちろん韓国人の知り合いも多い。韓国へ10回も行ったことがあるのに、見知らぬ韓国人とおしゃべりする機会は言葉の問題もあって滅多になかった。今回出会った韓国人はその数でも自信に満ちた態度でも、日本人を圧倒していた。
(7 December, 2004)