雨の日に遊ぶ子供
− 連載エッセー「徒然の森」第23回
by 北嶋 千鶴子

 六本木ヒルズの裏手に幼稚園がある。場所柄のせいか金髪やら赤毛やら一目で外国人とわかる子供が元気に遊んでいる。可愛らしい様子を見られるので、その道を通るのが楽しみだった。どこの国の子供も同じだなというのが私の最初の印象だった。

 ある雨の日のことだった。今日は子供の遊んでいる姿は見られないなとちょっと残念に思いながら歩いて行った。ところがいつものように元気な声が聞こえてきた。雨は結構降っていたから、こんな日にレインコートを着て滑り台などで遊んでいる子は日本では滅多に見られない。けれども子供たちは晴れた日と同じように歓声をあげて遊んでいた。濡れることをちっとも気にしていない。先生も親も、外で遊ぶのが当たり前だという様子だった。あまりに珍しい光景だったので私はちょっと立ち止まって見入ってしまった。

 そう言えばあるとき、雨の日に傘を貸そうと申し出た私に、アメリカ人の学生が「このぐらいの雨は何でもない。アメリカだったら傘なんかさしていたら弱虫って言われちゃうよ」と話していた。彼もこの幼稚園の子供のように、幼いときから雨の中で遊びながら育ったのだろうか。

 その後も雨のたびに気になって見るのだが、いつも子供は外で遊んでいる。この六本木の幼稚園が特別なのか、それとも欧米ではこのように雨の中で遊ばせるのが普通なのか確かなことはわからない。この子たちもあのアメリカの学生のように「雨なんか平気だ」と言うようになるのだろう。小さい頃の育て方が子供に大きな影響を与えるのは間違いないのだから。

 韓国人からは、日本に来て子供が真冬でも半ズボンで過ごしているのに驚いたということを度々聞かされていた。私たち日本人にとって、半ズボン姿は珍しくもないことなのだが。かれらもまた「日本では冬でも子供を半ズボンで育てているんだよ」と日本での経験を語るのだろう。

 しかしそれはさておき、雨の日の遊びのことは、この園独自の方針なのかそれとも誰もがしている習慣なのかはっきりしない。日本でも英語教育に熱心な園があるかと思うと、1年中パンツ一つで過ごさせる園や、裸足にさせている園もある。そのうち確かめてみなければと思う。
(7 November, 2004)